トランプから「弾劾された大統領」の汚点は消えない、永遠に
Impeachment Is a Permanent Stain
弾劾が政局化されたため、今後は誰が大統領になっても、必ず弾劾されるのではないか。そんな懸念も一部にはあるようだ。共和党と民主党の対立で弾劾が恒例行事のようになれば、政治が機能不全に陥りかねない、というのだ。
これには苦笑を禁じ得ない。自分たちがもともとやるつもりだったことを民主党のせいにするのは、共和党の得意技だ。共和党はまだヒラリー・クリントンが大統領になっていないうちから彼女を弾劾するための策を練っていた。
もちろん、これからも弾劾の動きは相次ぐだろう。共和党はトランプの卑劣なゆすりが例外的な愚挙であることを隠すため、似たような問題を次々に作り出すはずだ。
共和党はトランプが弾劾されてもされなくても、同じような手法を使っていただろう。そうではないようなふりをするのはバカげているし、弾劾が常態化するのを防ぐためと称して、違法行為を許すのもバカげている。
もっと言えば弾劾が常態化しても、それは必ずしも最悪の事態ではないかもしれない。行政府が肥大化し、その権限を誰も制限しようとしない場合、たとえ政局化した弾劾であっても大統領が絶えず議会の監視の目にさらされるのは悪いことではない。
大統領の評価に弾劾が及ぼす長期的な影響については、弾劾が実現しなかったジョージ・W・ブッシュ元大統領の例を見れば分かる。ブッシュは虚偽の口実でイラクに侵攻。その結果、多くの尊い命が失われ巨額の血税が戦費につぎ込まれたが、公式には誰もその責任を問われなかった。
ビル・クリントンの輝きが薄れる一方で、ブッシュはホワイトハウスを去った後、なぜか人気が出た。皮肉にもトランプのおかげでブッシュの株が上がったとも言える。アメリカばかりか世界全体に深刻な痛手を与えたにもかかわらず、トランプと比べればブッシュはまだしも見識ある政治家に見えてしまうからだ。
「トランプの弾劾など誰も気に掛けていない」と言われるが、異常なまでに気に掛けている人間が1人いる。トランプその人だ。弾劾について絶えずツイートし、下院議長宛てにどうか弾劾は勘弁してくれと、長々と泣き言をつづるありさま。自分の本性が暴かれて業績に汚点が付くのを避けたい一心なのだ。だが残念ながら悪あがきはむなしい。
下院議長宛ての手紙に「最も頑強に最も力強く」弾劾に抗議すると書いたトランプ。かつて「トランプ大学」で受講生をだまして高額な授業料を巻き上げ、不正行為を働き、外国政府をゆすった男は今や、当然の報いを受けようとしている。彼が周囲の連中を泥水のプールに引きずり込み、盛大な泥しぶきで事実を隠そうとしても、既に書かれつつある歴史は消せない。
そして、もう1つおまけがある。上院共和党がいかにトランプに屈服し、いかに有権者を裏切ってトランプの自己利益に尽くしているかアメリカ人はまだよく分かっていない。これから始まる裁判でそれがはっきり分かるはずだ。
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<2019年12月31日/2020年1月7日号掲載>
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