相次ぐ台風被害で国土強靭化緊急対策拡充へ 人手と予算の不足が課題に
人手不足と財務省の壁、対策期間延長で対応
しかし人手不足により「エアコン設置が完了していないなど、予算を使い切れていない状態」(経済官庁幹部)であるため、財務省は現在までのところ大幅な拡充に慎重姿勢だ。
与党内でも、治水対策は「時間がかかるため短期の補正予算で対応する性格でない」(幹部周辺)との声がある。台風19号で堤防が決壊した千曲川や阿武隈川は、決壊箇所の修復にどのような工事が必要か検証する有識者委員会が立ち上がったばかりで、「結論が出るには数カ月かかる」(国土交通省幹部)状態だ。
人手不足に加え「長年の公共工事縮小で地方の建設業者数が減少しており、公共工事を急には増やせない」(同幹部)との指摘もある。このため支出抑制を重視する財務省内でも「水害対策では、建設事業者が増えるような政策の方向性も打ち出す必要があるのでは」(幹部)と懸念する声も聞かれ始めた。
与党内は大規模な水害対策を要望する声が多いが、「短期間の支出を拡大しようとすれば『人手不足で無理』と財務省から足元を見られるので、期間を延長することで規模を拡大したい」(自民幹部)との意見が主軸になりつつあるようだ。
財務省内でも、消費増税対策として2019年度と20年度の本予算に計上される2兆円規模の臨時・特別の措置がなくなる21年度以降の対応が議論されており、水害対策も、細く長く支出を拡大する形で議論される公算が大きそうだ。
補正予算については「20年度予算と一緒に通常国会で審議するためには3週間以内にはまとめる必要がある」(財務省幹部)との声が多い。その前提として各年度の対策規模を決めることになるため、強靭化対策の拡充も含め、11月中旬には一定の方向性が出そうだ。
(編集:石田仁志)
[東京 29日 ロイター]
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