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習近平が言ったとする「(分断勢力の)体はつぶされ骨は粉々に」を検証する

2019年10月15日(火)19時50分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そもそも習近平が用いた「粉身碎骨」という言葉は日本語の「粉骨砕身(ふんこつ・さいしん)」に相当し、本来は「骨を粉にして身を砕くほど、一生懸命努力すること」を意味する。それくらい、「力の限りを尽くしましょう」という意味だ。筆者が小さい頃(1950年代初期)は天津の小学校で、よく「粉身碎骨して、革命に貢献しよう」とか「粉身碎骨して、新中国の建設に努力しよう」などと言われたものである。

「粉身碎骨」は時には、「徹底して敵をやっつけよう」という場合に使われることもあった。もちろん稀にだが、文字通り「高い所から落ちるなどして、体が粉々に砕けてしまった」という時に使われないこともない。

基本は日本語に「粉骨砕身」として定着したように「それくらい、死に物狂いで一生懸命努力する」意味として長いこと使われてきた中国の4字熟語である。

それを知らない英文圏の記者が「なんという恐ろしい表現!」と仰天してしまったのを、日本人が原文にも当たらずにコピペ歪曲報道をし、さらに習近平が香港デモを「念頭に」などと、読心術まで発揮するようになったのが、この報道の根本的間違いで、日本の少なからぬメディアの怠慢なのである。

国際社会における背景──「チベット」に関するプラハ市長発言

怠慢だけなら、まだ許されるかもしれない。

しかし、ここには見落としてはならない国際情勢が潜んでいる。それを見落とす誤導を日本メディアがする可能性があるので、もう一つの国際情勢を考察しておこう。

実は10月7日、北京市はチェコのプラハ市との姉妹都市関係を解消した。なぜなら、プラハ市のフジブ市長が姉妹都市協定に記載された「一つの中国」の原則を削除するよう求めたからだ。

激怒した中国は中央テレビ局CCTVを始め多くの中国共産党あるいは中国政府のメディアが報道している。たとえばその中の一つに中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」などがある。中国のチェコ、直接的にはプラハ市に対する怒りが表れている。

特に去年市長に就任したフジブ市長は今年3月に台湾を訪問し、蔡英文総統とも対談している。これは中国政府(北京)にとっては許しがたい暴挙だった。しかしフジブ市長は「台湾ファン」であるだけでなく、「チベット亡命政府を支援」し、人権問題を重視しているのだ。これに関しては是非とも10月8日付の「RFIの報道」をご覧いただきたい。

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