最新記事

ヘルス

日焼けサロンは同性愛者をターゲットに出店している?

Tanning Salons Could Be Targeting Gay Men by Opening in LGBT Neighborhoods

2019年10月8日(火)14時15分
カシュミラ・ガンダー

日焼けマシンは皮膚がんのリスクを倍増させるとも言われる Gangis_Khan/iStock.

<同性愛男性カップルが多い都市には、日焼けサロンの店舗数が多いことがわかった>

日焼けサロンは同性愛の男性カップルが多い地域に店を構えている割合が高いという調査結果が発表された。研究者らは日焼けサロン業界が同性愛者をターゲットにしているのではないか、と心配している。

アメリカの10都市の国勢調査のデータを調べたこの調査では、男性の同性カップルが全世帯の10%を占める地区から160メートル以内に日焼けサロンが存在する確率は、男性の同性カップルが10%未満の地区の2倍になることがわかった。

チームが調査対象にしたのは、ロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコ、シアトル、サンディエゴ、ダラス、フェニックス、ワシントンD.C.、ポートランド、デンバーとアメリカで最もLGBT人口が多い都市だ。

米医師会の月刊オープンアクセス医学雑誌JAMAネットワークオープンに掲載されたこの結果は、住民の所得水準や人種、若い女性の割合(若い女性には日焼けサロンの愛用者が多い)とは関係ない。

調査を行ったスタンフォード大学の研究者ら以前、同性愛の男性は日焼けマシンをよく使う傾向があり、そのために皮膚癌を発症する可能性が高い。場所と料金が適切であれば日焼けサロンに魅力を感じることを発見していた。

しかし今回の調査では、ジムやアパート、ホテルなどに設置されている日焼けマシンについては調査の対象にできなかったため、結論は限定的だ。

皮膚癌の発生原因に

室内での人工的な日焼けは、年46万件を超える皮膚癌の原因と見られている。ゲイやバイセクシュアルの男性は、異性愛の男性と比較して、皮膚癌になる可能性が2倍高く、生涯にわたって日焼けマシンを使用する可能性が6倍高いといわれている。

「これは大きな問題だ。LGBTコミュニティはすでに社会の偏見や差別と関わる健康格差を経験しているからだ」と本誌に語ったのは、研究の共著者であるスタンフォード大学の皮膚科・疫学科教授エレニ・リノス博士だ。

「さらに、同性愛の男性は皮膚癌の割合が不釣り合いに高い。本研究は、同性愛者の多い地域は発がん原因としてよく知られる日焼けマシンへのアクセスがしやすい環境にあることを初めて示した」と、彼女は言う。

リノスによれば、調査対象はアメリカの主要都市だけだったため、同じパターンが世界中で見られるかどうかは定かではない。

日焼けサロン業界がLGBTのコミュニティを意図的にターゲットにしているのかどうかは不明だが、「そうだとしたら、とても心配だ」とリノスは言う。

「たばこ産業は、LGBTをはじめ健康リスクの高いコミュニティにタバコを販売していることが明らかになっている。こうした地域で日焼けマシンの数が増えていることは、健康格差を悪化させる可能性があるし、LGBTコミュニティはそのことを知る必要がある」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは147円前半で売買交錯、一時5カ月

ワールド

フィリピン前大統領逮捕、麻薬戦争巡りICCが逮捕状

ビジネス

2月工作機械受注は前年比3.5%増=工作機械工業会

ワールド

シェブロンCEO「米エネ政策に持続性を」、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 2
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 3
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 4
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 5
    「中国の接触、米国の標的を避けたい」海運業界で「…
  • 6
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    「汚すぎる」...アカデミー賞の会場で「噛んでいたガ…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中