「政府は真実を隠している!」 UFOブームがアメリカに再び襲来

DO ALIENS EXIST?

2019年8月2日(金)19時15分
キース・クルーア(ジャーナリスト)

確かにUFO関連市場は大きい。ケーブルテレビでは『古代の宇宙人』や『UFOハンター』といったドキュメンタリー調のフィクション番組が放送され、視聴者から熱烈な支持を受けている。ヒストリーチャンネルは50~60年代に国防総省に実在した「プロジェクト・ブルーブック」というUFO目撃情報の調査プロジェクトを題材にした連続ドラマの放映を予定している。

ちなみに60年代末にこの調査プログラムが終了した後、米政府は一貫してUFOに関する調査は行っていないとの立場を取ってきた。17年、エリゾンドが声を上げるまでは......。

目撃情報の信憑性についてエリゾンドは「データが最終的に真実を物語るだろう」と述べている。だがそのデータはどこにあるのかと問うと、エリゾンドから返ってくるのはディープステートが隠しているといった言葉だけだ。国防総省の調査プロジェクトでは大学に研究を委託するなど「大量の」データが集められたが、その大半は「情報自由法の対象外」で、情報公開を申請してもほとんど情報は得られないと、彼は言う。

だがこの主張は、元上院議員のリードが18年3月にニューヨーク誌のインタビューで語った内容と矛盾する。リードは「(報告書の)文書は大量で、完成後に入手可能になった。その大半、少なくとも80%は公開されている」と述べた。また、元国防次官補代理のメロンがワシントン・ポストに寄稿した内容とも矛盾する。メロンは「目撃情報のデータの量は増えている」と書いた。

メロンはそうしたデータの例として、正体不明の飛行物体を捉えた軍のレーダーデータや、この物体に遭遇したとみられる海軍の戦闘機のコクピット映像や音声記録を挙げている。軍のパイロットがティックタック形のUFOを目撃したのは04年の1件だけではないとメロンは言う。パイロットたちは同様のUFOと少なくとももう1回は遭遇しており、UFOが海に落ちていって水面のすぐ下で動くのを見たと語っているという。またメロンは「ティックタック形は別にしても、海軍の兵士や艦艇からのものを含め、この数年だけで目撃情報は数十件ある。1回きりの出来事では断じてない」と述べた。

ufo181211b.jpg

15年11月にカリフォルニア州ランズバーグで目撃された光る物体 MARCUS YAMーLOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES


メロンはティックタック形UFOの映像には説得力があると思っているが、UFO信者でない専門家の見方は異なる。「こうして常ならざるものが見えるのは全て、自然もしくは人間の手による現象によって説明がつく」と言うのは、ハーバード大学天文学部のアビ・ローブ学部長だ。

世界中の国が隠蔽に参加?

要するに、パイロットたちが見たのは自分たちが使っている機器や太陽、鳥や雲がつくり出した光学的な幻だったのかもしれないのだ。過去にも例があるが、最高機密の実験機が同じエリアでテスト飛行していた可能性もある。17年、CNNがティックタック形UFOのビデオを天文学者のニール・ドグラース・タイソンに見せたところ、タイソンは皮肉っぽくこう答えた。「宇宙人からディナーのお誘いが来たら呼んでくれ」と。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米小売業の求人、10月は前年比16%減 年末商戦の

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模

ビジネス

米NEC委員長「経済対策に向け議会と協力」、財政調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中