「政府は真実を隠している!」 UFOブームがアメリカに再び襲来

DO ALIENS EXIST?

2019年8月2日(金)19時15分
キース・クルーア(ジャーナリスト)

エリゾンドが「証拠」の1つとして挙げるのは、04年の音声・動画ファイルだ。このファイルはNYTにリークされ(エリゾンドは自分ではないと主張している)、今ではUFO神話の重要な構成要素となっている。

2機のF/A18Fスーパーホーネット戦闘攻撃機がサンディエゴ沖の通常訓練で、後に報告書で「複数の特異な航空機械」と表現された物体の調査を指示された。パイロットは「機械」が高度6万フィート(約1万8000メートル)付近から50フィートまで瞬時に降下したと報告。パイロットの1人によれば、白いティックタック(カプセル形ミントキャンディー)のように見えたという。

UFO関連の市場は大きい

豊富な軍事的知識を持つアカデミーの人材はエリゾンドだけではない。クリントンとジョージ・W・ブッシュ大統領の時代に情報担当の国防次官補代理だったクリス・メロンも参加している。彼は当時、機密レベルが特に高い国防総省のプロジェクトを管掌していた。18年3月には、「相次ぐ軍とUFOとの遭遇──なぜ国防総省は注意を払わないのか?」と題した署名記事をワシントン・ポスト紙に投稿した。

ジム・セミバンはCIAの秘密調査部門に25年間所属していた。07年にCIAを退職し、設立後間もないアカデミーに加わった。「彼はスパイだ」と、デロングは17年11月のツイッターで自慢している。

アカデミーの共同創設者ハル・プトフは電気技師で、超能力に関するCIAと国防総省情報局(DIA)の研究に加わり、冒頭の国防総省の秘密プロジェクトで請負業者として働いていた。

アカデミーを立ち上げたのは17年10月だ。そのしばらく後、デロングはポッドキャスト配信者のジョー・ローガンのインタビューを受け、立ち上げに向けた準備は2年前から始まり、国防関係の高官や防衛産業関係者との秘密の会合を通してプランを練ってきたと語った(デロングは本誌の取材申し込みに応じなかった)。

この会合でデロングは、政府が宇宙人の死体を保管しているといった機密情報をいくつも耳にしたという。こうした真の情報を、ファンタジーやSFの制作を通して世間に伝える役に選ばれたのは、自分が有名人で若い世代に影響力があるからだと、彼は言う。

デロングはこれ以外にも「複数の種族の宇宙人が資源目当てで地球に来た」とか、「進化を促進するために宇宙人が定期的に人類の遺伝子を操作してきた」といった話もした。

デロングがこうした活動をする動機をうさんくさく感じる人は、UFO信者の中にもいる。デロングはUFO関連の本や商品を売っており、単に金目当てなのではないか、奇矯な発言も商売の一環なのではないかというわけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

ロシア黒海主要港にウクライナ攻撃、石油輸出停止 世

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は

ワールド

中国、日本への渡航自粛呼びかけ 高市首相の台湾巡る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中