「政府は真実を隠している!」 UFOブームがアメリカに再び襲来
DO ALIENS EXIST?
エリゾンドが「証拠」の1つとして挙げるのは、04年の音声・動画ファイルだ。このファイルはNYTにリークされ(エリゾンドは自分ではないと主張している)、今ではUFO神話の重要な構成要素となっている。
2機のF/A18Fスーパーホーネット戦闘攻撃機がサンディエゴ沖の通常訓練で、後に報告書で「複数の特異な航空機械」と表現された物体の調査を指示された。パイロットは「機械」が高度6万フィート(約1万8000メートル)付近から50フィートまで瞬時に降下したと報告。パイロットの1人によれば、白いティックタック(カプセル形ミントキャンディー)のように見えたという。
UFO関連の市場は大きい
豊富な軍事的知識を持つアカデミーの人材はエリゾンドだけではない。クリントンとジョージ・W・ブッシュ大統領の時代に情報担当の国防次官補代理だったクリス・メロンも参加している。彼は当時、機密レベルが特に高い国防総省のプロジェクトを管掌していた。18年3月には、「相次ぐ軍とUFOとの遭遇──なぜ国防総省は注意を払わないのか?」と題した署名記事をワシントン・ポスト紙に投稿した。
ジム・セミバンはCIAの秘密調査部門に25年間所属していた。07年にCIAを退職し、設立後間もないアカデミーに加わった。「彼はスパイだ」と、デロングは17年11月のツイッターで自慢している。
アカデミーの共同創設者ハル・プトフは電気技師で、超能力に関するCIAと国防総省情報局(DIA)の研究に加わり、冒頭の国防総省の秘密プロジェクトで請負業者として働いていた。
アカデミーを立ち上げたのは17年10月だ。そのしばらく後、デロングはポッドキャスト配信者のジョー・ローガンのインタビューを受け、立ち上げに向けた準備は2年前から始まり、国防関係の高官や防衛産業関係者との秘密の会合を通してプランを練ってきたと語った(デロングは本誌の取材申し込みに応じなかった)。
この会合でデロングは、政府が宇宙人の死体を保管しているといった機密情報をいくつも耳にしたという。こうした真の情報を、ファンタジーやSFの制作を通して世間に伝える役に選ばれたのは、自分が有名人で若い世代に影響力があるからだと、彼は言う。
デロングはこれ以外にも「複数の種族の宇宙人が資源目当てで地球に来た」とか、「進化を促進するために宇宙人が定期的に人類の遺伝子を操作してきた」といった話もした。
デロングがこうした活動をする動機をうさんくさく感じる人は、UFO信者の中にもいる。デロングはUFO関連の本や商品を売っており、単に金目当てなのではないか、奇矯な発言も商売の一環なのではないかというわけだ。