最新記事

中国

中国から「つらい...!」京アニ

2019年7月21日(日)13時50分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

こういった中共中央や中央政府のメディアが、京アニが受けた災禍をこのような形で大きく報道するなどということは、普通ではあり得ないことだ。

なぜなのか?

それならなぜ、今回は中共中央および政府が、こんなにまで大きく報道するのだろうか。

理由の一つとして考えられるのは、1980年以降に生まれた「80后(バー・リン・ホウ)」たちは、日本の動漫を見ないで育った人はほぼ一人もいないと言っていいほど、誰もが日本の動漫の洗礼を受けて大人になっていったことだ。その世代も今や40歳になろうとしている。物心ついたときの年齢から考えると、40代前半はみな、日本の動漫に夢中になって育った世代である。

その人たちが今や中堅クラスとして、社会のどの領域にも入り込んでいるわけだ。 当然、メディアにもこの80后がいる。

1990年以降に生まれた90后(ジュウ・リン・ホウ)でさえ、大人の仲間入りをして堂々と中堅層に入り込んでいる。

これらの人たちは冒頭の若者からの叫びのように「つらい...!」と嘆き、ショックを受けている。

しかし、上層部からの許可がなかったら、党の機関紙が勝手に報道することなど、許されない。何かがなければ、このような現象は起きない。

おまけに、CCTVの追悼特集などを見ると、かなり京アニに対する知識があって、愛を込めて制作していることがわかる。

そこで、いくつかの背景を考えてみた。

1.京アニ作品のファン層は報道を作る側にも浸透している。彼らが企画案を提出することはあり得る。「上から指示が下りてきたから報道した」のではなく、おそらく自主的に企画を建て、上に申請し、許可が降りたので報道が可能となったと考えるべきだろう。

2.ではなぜ許可を下したかということが肝心だが、冒頭の青年を取材したところ、「京アニの作品は基本的に楽観的、向上的な、努力を推奨する、いわゆる中国共産党がよく言う"正能量"(プラスのエネルギー)的な作品であります。退廃的ものが一切ない、比較的推奨しやすい作品群です。単に若者層だけではなく、報道関係者に彼らの作品に対して好意を持つ人は多いと思われます。だから今回は許可が下りやすかったのではないかと推測されます」という回答が戻ってきた。

3.さらに近年は若者の、党・政府系メディア離れが加速している。だから中共中央は何とか若者層に食い込もうと、スマホに漫画やアニメを用いた党の宣伝を行っているほどだ。従って今回のような事件を大々的に報道するのは、若者に対するイメージを改善するだろう。つまり、若者へのアピールという、「人民への迎合」的要素が入っていると言っていいのではないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBは当面政策維持を、生産性頼みは尚早=カンザス

ワールド

米雇用統計「素晴らしい」、米は借入コスト減らすべき

ワールド

米が制限順守ならロシアも同調、新START失効でラ

ビジネス

1月米雇用、13万人増と1年超ぶり大幅増 失業率4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 10
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中