中東追われたIS、アジアで復活を準備 フィリピン・テロ組織、エジプト人など外国メンバー参加
パキスタン人容疑者の逮捕がきっかけ
地元紙などの報道を総合すると、今回の外国人メンバーのフィリピンでの活動は、過去2カ月間に相次いで摘発したパキスタン人テロ容疑者の捜査から浮かび上がったという。
6月にスールー諸島インダナンにある軍の施設で発生した自爆テロ事件の捜査過程で爆弾製造に関与した疑いからミンダナオ島サンボアガで逮捕したパキスタン国籍のワカール・アハマッド容疑者(36)ら3人は、スールー諸島経由でフィリピンに不法入国して活動していたことが明らかになっている。
さらに2019年1月28日にスールー州ホロのキリスト教会で自爆テロを実行して死亡したインドネシア人夫妻も船でインドネシア領から南部ホロ島に不法入国して犯行に及んだ疑いがある。
こうしたことからインドネシアやマレーシア経由でフィリピン南部に不法入国するテロ組織のルートがあるとフィリピン治安当局は見ており、関係国との間でさらなる取り締まり強化でテロリストの流入阻止に全力を挙げている。
この2人のインドネシア人夫妻からなるテロ実行容疑者もフィリピンに不法入国後にサワジャーン指導者と面会してテロ実行を打ち合わせしたとされている。
フィリピン南部はイスラム教武装組織が以前から活発な活動をしている地域で、ISとの関係も密接とされる。もともとイスラム教徒の住民が多く住んでいたことからテロ組織メンバーが潜伏するには環境が整っている。
加えて海路でフィリピンに不法入国するルートも多く、マラウィ市の武装占拠事件以降、フィリピン、マレーシア、インドネシアが海軍、空軍も動員して不法入国に対する警戒監視態勢をとっているとはいえ、広大な海域をカバーするには不十分で、テロリストなどの不法入国が続いているのが現状だ。
一方、インドネシア当局は国内でのテロ組織壊滅を目指した国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」や国家情報庁(BIN)、さらに国軍部隊を動員したテロ組織の掃討作戦を継続している。こうしたインドネシアの取り締まり強化も、南部を中心にまだIS関連組織の活動が容易とされるフィリピンへのインドネシア人や外国人のテロ組織メンバーの渡航が続く背景とみられている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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