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増え続ける男性DV被害者......「恥ずかしい」と誰にも相談できない

2019年6月21日(金)15時45分
モーゲンスタン陽子

誰にも相談できない男性被害者

これらの数値はしかし、実際よりもだいぶ低いと考えられている。上記ドイツ政府の調査でも、男性被害者の誰一人として警察に通報していないという。また、約半数は、暴力に対する報復もしていない。最近、声をあげる男性が増えてきたとはいえ、やはり「女性から暴力を受けている」ことを「弱さ」と結びつけ、「男らしくない」「恥ずかしい」などと世間体を気にしてうち打ち明けられずにいるようだ。

「信じてもらえない(だろう)」という諦めもあるようだ。DVにおいては女性が被害者である場合が圧倒的だからだ。事実、男性がやり返してくることを見越して先に暴力をしかけ、男性が反抗した途端に警察に通報する女性もいるという。このような女性はしかし、男性だけでなく、DV被害に苦しむ数多くの女性たちの立場をも貶めていると言えるだろう。

ドイツの2州が公的支援プログラムを

被害が知られていたにもかかわらず、ドイツではこれまで男性DV被害者をサポートするシステムはほぼ皆無だった。性別にかかわらずDVの被害者を救済するべきであると考えたバイエルン州とノルトライン=ヴェストファーレン州は共同声明で18日、州政府として男性DV被害者を救済するプログラムを開設する計画を発表した。ドイツでこのような公的サービスが発足するのは初めてで、上記2州は他の州も彼らのあとに続き、州境を超えてサービスを提供できるようになることを期待している。

プログラムの三本柱の1つは、電話とオンラインでのカウンセリングサービスだ。2つめは避難所の建設と、カウンセリングセンターの設立。3つめは、男性に対する暴力に関する「タブーを無くし」「可視化する」ことを目指す。さらにノルトライン=ヴェストファーレン州は2021年に、州立法府に「少年、男性、および(L)GBTTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスセクシュアル、トランスジェンダー、およびインターセクシュアル)」に対する暴力と戦うためのアクションプランを提出する予定だ。

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