最新記事

天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶

浙江省で既に小工場30%が倒産──米中経済戦争の勝者がアメリカである理由

2019年6月4日(火)16時45分
長岡義博(本誌編集長)

――しかし貿易戦争を続ければ、米経済にも悪影響が出る。株価が下がることはトランプの再選に不利では?

アメリカの株価は時に下落する。(3000億ドル分の中国製品の関税率を25%に上げた)5月13日に大きく下落したが、翌日には持ち直した。アメリカの経済は全般的に「健康」なので大きな問題は出ない。米中の貿易戦争で生産拠点が中国から他の国に移り、2、3年後、アメリカの輸入品は中国からではなく他の国から来るようになるだろう。そうなれば米経済は安定する。もしアメリカが望む条件で中国と妥結できれば、トランプにとって大きな政治的加点になる。

ファーウェイの問題も経済的、そして政治的に深刻だ。経済的には、ファーウェイの製品が輸出できなくなれば、今後は国内市場だけで製品を売らなければならなくなる。政治的には、ファーウェイがアメリカから半導体チップや技術提供を受けられなくなれば、ウイグルなどを監視するシステムである「天網工程」はストップせざるを得なくなる。

――ファーウェイは中国の健全な民間活力を象徴する企業だ、という見方がある。しかし、一方でカナダで拘束されたCFOの孟晩舟(モン・ワンチョウ)は8通以上のパスポートを所持していたとされる。普通のビジネスパーソンが8通のパスポートを持っているだろうか?

CEOの任正非(レン・チョンフェイ)はファーウェイ株の1%しか持っていない。99%は工会(労働組合)が所有している。中国で労働組合は政府の管理下にある。99%を国が有している企業と言っていい。任は象徴にすぎない。ファーウェイを民間企業と考えるのは誤り。ファーウェイは中国の軍事情報機構だ。

※インタビュー後編:米中経済戦争の余波──習近平の権力基盤が早くも揺らぎ始めた

magSR190604invu-2.jpg

台湾の蔡英文総統と会見した陳破空氏(6月3日、台北市) 写真:陳破空氏提供

陳破空(チェン・ポーコン) Chen Pokong
1963年中国・四川省生まれ。86年に上海で起きた民主化要求運動に参加。広州市の中山大学で助教を務めていた89年、天安門事件に広州から加わり投獄。いったん釈放されたが94年に再び投獄され、96年にアメリカ亡命。コロンビア大学客員研究員などを経て、作家・テレビコメンテーターとしてニューヨークを拠点に活動している。新著に『そして幻想の中国繁栄30年が終わる――誰も知らない「天安門事件」の呪縛』(ビジネス社)。

20190611issue_cover200.jpg
※6月11日号(6月4日発売)は「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集。人民解放軍が人民を虐殺した悪夢から30年。アメリカに迫る大国となった中国は、これからどこへ向かうのか。独裁中国を待つ「落とし穴」をレポートする。


20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中