最新記事

中台統一

狙われる台湾──中国軍から甘い呼びかけ

10 Things in Exchange for Taking Back Taiwan

2019年3月7日(木)18時02分
トム・オコナー

平和統一を願う中国と台湾の旗(2016年5月、台北) Tyrone Siu-REUTERS

<「『1国2制度』の下、自由と民主主義を享受できる」──これは、かつてイギリス領だった香港を騙したときと同じ理屈ではないか?>

中台統一を受け入れたら、あなた方は10の特権を享受できると、中国軍高官がラジオを通じて台湾の人々に呼びかけた。

台湾メディアによると、この放送は中国人民解放軍の台湾向けラジオ局「海峡の声」が流したもの。中国軍の王衛星少将は、1949年に国共内戦に敗れた国民党が台湾に逃れて政権を樹立して以来、台湾人民は「真実を知る権利を剥奪されてきた」と述べ、その理由を5つ挙げた。

王によると、台湾の人々は「1国2制度」を正しく理解していない。その理由は「第1に台湾当局による長期にわたる反共教育、第2に台湾独立派の分離主義イデオロギーの悪影響、第3に再統一に対する警戒感、あらゆる再統一プランを積極的に回避もしくは拒絶する姿勢、第4に一部メディアの誤った報道、第5に1国2制度に関する情報提供が不十分で、人々がこの制度をきちんと理解していないこと」だという。

その上で王は、台湾の人々が台湾海峡の向こうの本土の後ろ盾を得れば、10の特権を享受できると述べた。

第1に、中国政府の指導下で自治政府を維持できる。王によれば、一案として台湾を中国の「特別行政区」に指定し、その行政府が「台湾の基本法(憲法)」に基づいて統治を行う方式も可能で、その場合中国共産党なり人民解放軍の幹部が台湾に常駐することはないという。

ウソのようなバラマキ

第2に、台湾の代表が本土の政治に参加することは歓迎される一方で、「1つの国」という概念に抵触しない限り、台湾は独自の法律を制定できる。立法のみならず、第3、第4の特権として、行政と司法の独立も認められる。

第5に、外交の権限は最終的には中央政府に帰するが、台湾当局は「台北」もしくは「中国の台湾特区」として、外国政府と独自に交渉を行える。第6に、人民解放軍と共に国防の任に当たるという条件で、台湾は独自の軍隊を持てる。

第7に、台湾の企業や住民は中央政府に対する納税義務を免除され、しかも要請があれば、中央政府は台湾に補助金を支給する。第8に、台湾当局は独自通貨を発行でき、その通貨には人民元とは独立した為替レートが適用され、台湾は独自の外貨準備を保有できる。第9に、台湾当局は独自の通商政策を実施し、外国と貿易協定を締結できる。

そして最後に、「平和的な再統一」が実現すれば、台湾当局は独自にパスポートを発行でき、私有財産制や宗教の自由など台湾の人々がいま享受している権利や制度は完全に守られると、王は保証した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

気候変動対策資金巡る米中協議進展=米特使

ビジネス

FRB、複数回の利下げ必要 労働市場の健全性維持=

ビジネス

FRB利下げ開始の「時期到来」、ペースは柔軟に対応

ワールド

米国籍の女性が死亡、イスラエル軍銃撃 ヨルダン川西
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 2
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻ってきた車の中に「複数の白い塊」...悪夢の光景にネット戦慄
  • 3
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 4
    「冗長で曖昧、意味不明」カマラ・ハリスの初のイン…
  • 5
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 6
    世界に400頭だけ...希少なウォンバット、なかでも珍…
  • 7
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 8
    【クイズ】最新の世界大学ランキングで、アジアから…
  • 9
    セブン「買収提案」の意味は重い...日本企業の「バー…
  • 10
    7人に1人が寝つきの悪さに悩む...「夜のエクササイズ…
  • 1
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つの共通点
  • 4
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 5
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 6
    無数のハムスターが飛行機内で「大脱走」...ハムパニ…
  • 7
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 8
    再結成オアシスのリアムが反論!「その態度最悪」「…
  • 9
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 10
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中