最新記事

移民

トランプが中間選挙でやり玉にあげる中米の移民キャラバン 今も米国目指して北上中

2018年11月6日(火)17時00分

警察がヒッチハイクを手助け

6時間が経過し、エスコバルさんはヒッチハイクをすることにした。

少し先の地点では、メキシコ警察の警察官が、道行く自動車を止めては女性や子どもを乗せていた。

この警察官は、キャラバンを止める指示は受けておらず、援助する義務があると感じたと話した。この日は、母親と子どもたちのために10台ほどの自動車を止めたと言う。

だが、エスコバルさんは自分で車を見つけた。

ミニバンの座席に落ち着いた一家は、感謝の気持ちでいっぱいだった。

ピヒヒアパンの中央広場は、何百人もの移民で祭りと難民キャンプを一緒にしたような騒ぎになっていた。エスコバルさん一家は、子どもがいる人専用の倉庫のようなシェルターに向かった。

医療スタッフが、足から血を流した女性の傷口にヨードチンキを塗っていた。人々は洗面所に殺到し、水浴びをしに川に走った人たちもいた。

午後には、シェルターは人いきれでむせ返るほどになった。エスコバルさんは外に出て、木の下にビニールシートを敷いた。あと2つ町を越えれば、「ラ・ベスティア(野獣)」と呼ばれる北行きの貨物列車に乗れるのだ。

周りでは、疲れきった大人たちが眠りこけている。

だがアドナイ君は、3本目の水のボトルを取りに駆け出した。デンゼル君は、木に登っている。

「この子たちは、大人と同じぐらい強い」と、エスコバルさん。翌日の出発は午前3時。子どもたちは、また元気に動きだしてくれるだろう。

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

Delphine Schrank

[ピヒヒアパン(メキシコ) 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中