テレビで反響を呼んだ取材、『発達障害と少年犯罪』
また、親から虐待を受けることで二次障害を引き起こしてトラウマを抱えている子どもの場合、ほぼ例外なくその親はうつ状態にあり、幼い頃に虐待を受けているのだという。親から子、子から孫へと虐待やネグレクトが伝わっていく「世代間連鎖」である。
小さいときに虐待やネグレクトを受け、そのストレスを抱えたまま成長して大人になった場合、今度は我が子に虐待をしてしまうという悲しい現実だ。
周りがどれだけサポートできるか
では、発達障害をもつ子どもの当事者でなく、その家族でもない私たちにはなにができるのだろう? そのことについて著者は、「それは、後方支援である」と断言している。発達障害をもつ子どもには、周りからのサポートも含めたさまざまな角度からの支援が必要で、それこそ私たちにできることだという考え方である。
「後方支援」は、大きく以下の2つに集約されるそうだ。
1. 子どもの頃から目を配る
2. サポート体制を整備する(229ページより)
もちろん、これらを充分に機能させるためには、教育、医療、行政(社会)、その他あらゆる側面が一体となって取り組む必要があるだろう。そして1.の「子どもの頃から目を配る」には、2つのポイントがあるという。
まず1つ目は、早期発見だ。もし自分の子どもに発達障害のような傾向があると疑わしく感じた場合には、迷わず専門医の診断を仰ぐべきだということ。そして、それは周囲も気をつけてあげる必要がある。先にも触れたように、自閉症スペクトラムなどをもつ子どもの親は、同じように障害をもっていることが多く、自分の子どもの特性に気づきにくい場合があるからだ。
また、そのような診断を受けても周囲に隠してはいけない。なぜなら、隠すことで子どもに罪悪感を抱かせることになるし、なにかあった際に周囲に助けを求めづらくなるからだ。いわば、周りの人みんなで、子どもとその家族をサポートしてあげるという意識が大切なのである。
そして、子どもが発達障害をもっていることがわかったら、次に必要なのが、日々のケアと早期療育といったサポート。これについての鍵は、周りがサポートをどれだけできるかということ。
早期療育という点で一番大切だと感じるのは、「愛着感情の定着」である。愛着の気持ちは愛情に育つ基盤感情だ。子どものこの感情は大切にしてあげたいものだ。(232ページより)
もちろん、基本的なトレーニングも必要だ。身だしなみを整える、部屋の片づけや持ち物の管理をする、金銭管理をする、自分に合った進路選択をする、外出したときは予定の場所に時間通りに移動する、対人関係の基本を身につける、法的トラブルや危険を避けるというような、「社会で生きていくためのこと」ができないのなら、周りが教えてあげなければならないということだ。