女性の政治参加が進まない国で、野田総務相が示す「覚悟」
女性の政治参加が進まない
現在、衆議院の女性議員の中では最多当選の野田氏は、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(全員参加)といった問題にも積極的に発言、活動している。特に「政策決定の場に女性が少なすぎることが、この国の政策にゆがみをもたらしている」として女性議員の増加に力を入れている。
日本の一般企業で管理職に占める女性の割合は、2017年の調査でも13.2%。アメリカの43.4%(2013年)、イギリスの36.0%(2016年)、ドイツの29.3%(2016年)などと比較すると、依然として非常に低い水準に留まっていることがわかる。それはそのまま、政治の世界にも当てはまる。
2017年に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数」によれば、日本における男女の格差は、世界144カ国中114位となっている。だが、その詳細を見てみれば、4つの指数のうち「健康」では1位。「教育」でも74位と、さほど決定的な順位ではない。
対して、「経済参画」は114位、「政治参画」は実に123位だ。つまり、女性議員の少なさが日本の男女格差の大きなネックになっている。そこで野田氏など有志は、議席や候補者の一定割合を女性とする「クオータ制」の導入を目指したが、強い反対に遭って実現には至っていない。
自民党の中にはいまだに、支持率が高いゆえに「国民の多数が自民党はいいと言っているんだから、べつに女性は要らないでしょう」といった意見があるという。女性議員の比率を将来は五分五分にすると聞いて、「これ以上の女性の社会進出は国を滅ぼす」と言った国会議員もいるらしい。
政治の力で「違和感」を解消する
もっぱら男性が持っている既得権を、強引に引き剥がすとまでは言わずとも、痛くないように剥がしていくにはどうすればいいのか――そんな苦悩ものぞかせながら、同時に野田氏は、クオータ制に反対する議員の中に女性も多くいることを嘆いている。
そうした女性議員は、自分は実力で当選したのに、クオータ制で女性枠ができたら自分の力が過小評価される、という点を心配しているのだ(本書で野田氏と対談しているカルビーシニアチェアマンの松本晃氏は、これを「『女王蜂』状態」と呼ぶ)。
これこそ、ダイバーシティを妨げる既得権益だと言える。結局のところ、男性でも女性でも変わりはない。また他のどんな集団であっても、自分たちとは違う「異物」に対する違和感は当然あり、そこには既得権が付き物だ。
既得権は、いつかは手放す日が来るだろうが、それよりも政治の力で制度化することで、思い切って異物をどんどん入れてしまえば、もう異物ではなくなる。そうすれば既得権益などなくなる。それが、野田氏が総理を目指す理由のひとつになっている。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相や英国のテリーザ・メイ首相をはじめとして、世界各国では女性リーダーが当然のように増えている。果たして、日本初の女性総理の誕生は、いつになるだろうか。
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