最新記事

基礎知識

ムスリムに恋をしたら結婚できる? 今さら聞けないイスラム教15の疑問

2018年7月5日(木)21時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Q 08. どんな儀式や行事がありますか?

イスラム暦で9月(ラマダーン月)の1カ月間、飲・食・性の欲を絶つ「断食(斎戒)」の儀式が有名。ただし丸一日ではなく、太陽が出ている間だけである。そのため、日没後には日中の渇きをいやすべく大いに飲み食いに専念することになる。貧富の差なく、ひもじい思いをすることで、信者の連帯感が醸成されるのである。

またラマダーン月が終わると、「断食明けの祭」が行われる。新年を迎えるような雰囲気となる。

イスラム教徒の生涯における最大の儀式は、メッカ巡礼だ。イスラム暦12月の8日から10日の3日間、カアバ神殿およびメッカ近郊の各所を巡り、決められた儀式を遂行する。イスラム教徒は、「可能」であれば一生に一度はメッカ巡礼が義務付けられている。「可能」な場合とは、往復する体力と旅費を有し、留守中の家族の生活費も支弁できる状態を指す。巡礼最終日には「犠牲祭」が行われる。カアバ神殿を建立したアブラハムが息子イシュマエル(ユダヤ教ではイサクとする)を神に供えようとした故事にちなみ、羊などを屠り、神に捧げる。

Q 09. どんな宗派がありますか?

16億人もの信者を有するイスラム教には、スンナ派とシーア派という2つの宗派がある。両者を分ける要因は、〝預言者ムハンマドの政治的後継者(カリフ)は、彼の従弟アリーとその子孫である〞という主張に与するか否か。与する宗派がシーア派であり、与しない宗派がスンナ派である。

全イスラム教徒の約9割をスンナ派信徒が占め、多数派を構成する。シーア派は約1割で、さらに下位区分があり、最も多い宗派は十二イマーム派でイラン全土からイラク南部に広がっている。

Q 10. 食べてはいけないものはありますか?

豚、酒、死肉、血がNG。コーランでは、飲酒および死肉、血、豚肉、アッラー以外の神への供物の摂取が禁止されている。酒の場合、飲酒に加えて、売買や醸造も禁止である。ただ生命の危険があり酒以外に水分補給ができない場合、飲酒は合法となる。死肉とは自然死や病死した動物の肉のこと。イスラム教では法に則った屠畜法で得た動物の肉以外を食べてはいけない。

豚肉禁止の理由は定かではないが、ユダヤ教も禁止しており、何らかの関係が疑われる。豚肉そのもののほか、豚由来の食材を使った料理や豚を調理した器具でつくった料理は、豚肉が入っていなくても摂取が忌避される。

Q 11. ファッションや髪型に決まりはありますか?

イスラム教徒を外見的に特徴づけるものとして、女性のヴェールと男性の顎鬚がある。

コーランには「女性は陰部を守り、外に現れている部分以外の美しいところを人に見せぬように」とある。この見せてはならない美しい部分は「アウラ(恥部)」と呼ばれ、その範囲についてはさまざまな解釈があるが、女性の場合、伝統的に手首・足首より上の肢体と、頭部の顔以外の部分とされてきた。そのため、不特定多数の人の前に出る際は、全身を覆う衣服を着て身体の線を隠し、髪を覆う布を頭に巻く。

こうした慣習はイスラム教に固有のものではなく、ひとつには高温乾燥の砂漠気候にあって肌や髪を保護する意味があり、また肌や髪を露わにする女性は娼婦や踊り子など身分の低い者であって、高貴な女性にふさわしくないものとされていたことが影響しているだろう。ちなみに、男性にもアウラが設定されており、膝上から臍までを隠す必要がある。

一方、男性の顎鬚であるが、これはイスラム教徒にとっての模範である預言者ムハンマドがあまり形を整えずに顎鬚をのばしていたという彼のスンナ(慣行)に倣ってのばす信者が多いというだけで、義務ではない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中