最新記事

欧州

混乱のイタリア政界、再選挙へ動く ユーロの是非問う事実上の国民投票に

2018年5月30日(水)09時00分

マッシモ・ダレーマ元首相は26日の演説で既存政党側の不安を代弁し、「もしサボーナ氏の指名拒否が原因で再選挙となれば、(反既成政治を掲げる勢力は)80%の票を得るだろう」と発言した。

街頭でも、サボーナ氏の経済財務相就任を強く求めていたサルビーニ氏が大統領の指名拒否に異を唱え、再選挙を目指す動きを支持する一定の声がある。ローマ中心部でカフェを営む54歳の男性は「大統領は国を売った」と語り、イタリアがユーロ圏にとどまってほしいとはいえ、自分たちの懸念を他のEU加盟国が真剣に受け止める必要がある、と訴えた。

大統領がサボーナ氏の指名を拒否したことは、3月の総選挙でほとんど話題に上らなかったユーロを争点にした感もある。

なぜ指名拒否したかをテレビで説明した大統領は「ユーロ加盟問題は根本的な選択肢だ。議論するなら真面目にやらなければならない」と強調した。

サルビーニ氏は2月、ユーロ加盟をイタリア経済にとって「間違い」と手厳しく批判。五つ星運動は、以前提唱していたユーロ加盟の是非を問う国民投票実施の公約は取り下げたが、創設者のベッペ・グリッロ氏は最近この考えを蒸し返している。

さらに同盟が大統領の姿勢に対する街頭抗議をほのめかしているため、国内政治情勢は非常に緊迫化してきた。ソーシャルメディアでは同盟や五つ星運動の共鳴者が大統領を殺害すると脅迫する事態にまでなった。

一方、イタリアと欧州の関係を不可欠とみなす国民も存在する。ローマで買い物をしていたある女性は大統領の支持を表明し、「私は絶対的に親欧州派で、イタリアは将来も欧州と結び付くべきだと信じている」と話した。

イタリア国債と株が下げ圧力を受け、借り入れコストが上昇している以上、国民は自らの懐具合を気にする側面もあるだろう。ポリシーソナールのガリエッティ氏は「平均的な有権者は恐らく反既成政治勢力に心情的には喝采を送る。ただし財布からは、その反対の声が発せられる」と説明し、再選挙は「心情と財布の綱引き」になると予想している。

(Steve Scherer記者)

[ローマ 28日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241203issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月3日号(11月26日発売)は「老けない食べ方の科学」特集。脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす最新の食事法。[PLUS]和田秀樹医師に聞く最強の食べ方

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏指名の閣僚候補らに脅迫、自宅に爆破予告な

ビジネス

米GDP、第3四半期改定値は+2.8% 速報値から

ワールド

韓国大統領、ウクライナ代表団と会談 武器支援要請と

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、10月は前月比2.0%上昇 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 3
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウクライナ無人機攻撃の標的に 「巨大な炎」が撮影される
  • 4
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    「健康寿命」を2歳伸ばす...日本生命が7万人の全役員…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    未婚化・少子化の裏で進行する、「持てる者」と「持…
  • 9
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 10
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中