4期目のプーチンを襲うロシア経済危機 トランプが発表した新制裁が重荷に
4月9日、米国によるロシアへの追加制裁で、2014年の西側諸国との衝突後にようやく根ざし始めていたロシア経済の回復がとん挫する恐れが出てきた。写真はシベリア中部のクラスノヤルスクにある食料品店で支払いをする客。2015年8月撮影(2018年 ロイター/Ilya Naymushin)
米国によるロシアへの追加制裁で、2014年の西側諸国との衝突後にようやく根ざし始めていたロシア経済の回復がとん挫する恐れが出てきたと、アナリストや投資家が9日指摘した。
米国は6日、ロシアに対して新たな制裁措置を発動。16年の米大統領選介入や他の「悪質な行為」を理由に、ロシア政府高官やいくつかの大企業を対象とした。
ロコインベストのリサーチヘッドで経済発展省の元幹部でもあるキリル・トレマソフ氏は「14年以来の制裁はロシア経済に痛みを与えなかったと人々は確信している感じがする。これはまったく根拠がない。今回の制裁で西側諸国との関係は新たな段階に入った。新たな現実はかなり深刻だ」と話した。
アナリストらは制裁がロシアを何年もの低成長に追いやる可能性があると述べた。原油安やウクライナ問題による前回の制裁がもたらした2年間の低迷から回復するためロシア政府がせっかく実施してきた景気刺激策は妨げられてしまう。
プーチン大統領は3月に圧倒的な支持を得て4期目に再選されたが、有権者による経済成長への期待に応え、生活水準悪化への懸念を和らげるという圧力にさらされている。
ロシアの国内総生産(GDP)は2年の縮小の後、昨年は原油価格の上昇を背景に1.5%成長したものの、政府目標の2%には届いていない。コンサルティング会社マクロ・アドバイザリーのクリス・ウィーファー氏は原油価格が1バレル=60ドル超で推移すれば今年の成長率は1.8%になるとの見方を維持しながらも「もちろん大きな問題はロシアがそうした低成長環境にどれだけ長くとどまるかだ」と指摘した。
その上で「大統領の在任期間に経済は加速し、力強くなる必要があるが、制裁や直接投資が効いてくる。2018年は沈滞の年になる」と話す。
制裁対象にプーチン大統領に近いとされる人物以外も含まれたことで、ロシアのどんな会社や経営者でも標的になりうることが分かったと投資家は言う。
ルーブルは9日にこの3年で最大の下げ幅を記録、主要企業の株価も下げた。経済全体の指標とされるズベルバンクは17%下落、制裁対象のオレグ・デリパスカ氏が主要オーナーのアルミ大手ルサール<0486.HK>は半分以上の価値を失った。