史上初の米朝首脳会談、北朝鮮の悲願は米政権のリスクに
北朝鮮への褒美
北朝鮮はこれまで、国際的な正当性を確保するために米国指導者との首脳会談を求めてきており、米政権側は、それが一因で、この要望を拒否してきたと、専門家は指摘する。
「首脳会談は、北朝鮮にとってはご褒美だ」と、韓国・釜山大のロバート・ケリー教授は指摘する。「世界最強かつ民主主義陣営を主導する国家元首と会うという栄誉を彼らに与えることになる。だからこそ、北朝鮮が意味ある譲歩をしない限り、実現されるべきではない。これまでの大統領たちが応じてこなかったのはそのためだ」
北朝鮮が核兵器を保有し、トランプ氏がこの撤去のために軍事攻撃が必要になる可能性に言及している今となっては、首脳会談が失敗した場合の代償はこれまでより大きくなると、専門家はみている。
金正恩氏は、「非核化にコミット」し、核とミサイルの実験を凍結すると話したと、韓国特使として訪米した鄭義溶・大統領府国家安全保障室長は8日、ホワイトハウスで記者団に明らかにした。だが北朝鮮は、まだ詳細を明らかにしていない。
「これまで米朝首脳会談が行われたことは一度もない。北朝鮮がすでに核兵器を手に入れた後で会談を行うことは、基本的にはそれを前提に米国は北朝鮮と交渉に臨む用意があるというシグナルを送ることになる」と、カーネギー清華グローバル政策センターの北朝鮮専門家、趙通氏は言う。
「たとえ首脳会談で何ら進展がなくても、北朝鮮は1つ目の目的を果たしたことになる」
米政府高官は、トランプ氏はこれまでの大統領とは違うアプローチを取ることを期待されて当選したと話す。
それには、過去に失敗したような実務レベルでの交渉を避け、「過去の長年の足踏み状態を繰り返す代わりに、決断できる人物である」金氏と会うことも含まれていると、この高官は言う。
2000年に北朝鮮の趙明禄(チョ・ミョンロク)国防委員会第一副委員長がホワイトハウスを訪問し、当時のクリントン大統領と面会した、北朝鮮初で最高位の高官となった。
その直後に、オルブライト国務長官(当時)が平壌を訪問。クリントン氏の訪朝の地ならしのため、金正恩氏の父の故金正日(キム・ジョンイル)総書記と会談した。だが、クリントン氏の訪朝は、在任中に実現しなかった。
オバマ米政権時代にも、北朝鮮高官らは米国との突破口を探ったが、米国側が外交的な譲歩を何も示さなかったため失望していたと、クラッパー元米国家情報長官は話している。
トランプ氏の強硬姿勢が首脳会談の機運を作ったと評価する専門家の中にも、今回は異なる結果を生むか注視していると話す人がいる。
「北朝鮮は、過去にもこういう発言をしている。金正日氏は、クリントン大統領に会いたがっていた」と、米シンクタンク「民主主義防衛基金」のマーク・デュボビッツ会長は言う。
「北朝鮮は、非核化に真剣にならなければいけない。一方で、トランプ政権は、5月の首脳会談に向けて厳しい制裁措置を続け、圧力を最大の状態に維持しておく必要がある」と、同氏は話した。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[ソウル/ワシントン 9日 ロイター]
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