中国、地方都市に「特区ブーム」 中央政府が恐れる債務拡大の懸念も
宜興市丁蜀鎮の旧市街地で11月撮影(2017年 ロイター/Christian Shepherd)
長江のほとりの丘陵地帯に広がる中国南部の地方都市・忠県は、当初の計画では「エコシティ」導入による町おこしによって、貧困から脱出するはずだった。
だが土地の権利を巡る地元政府との軋轢(あつれき)から、開発業者が緑をテーマにしたこの計画から撤退。後に残されたものは、建設途中で放棄された建造物と、廃棄物の山だった。
忠県の地元政府はいま、別の経済活性化計画を押し進めている。総工費14億元(約276億円)のオンラインゲーム向け複合施設を建設し、中国で急成長する「eスポーツ」市場で儲けようというのだ。
完成すれば、この施設は6000人を収容できるスタジアムのほか、ゲーム関連スタートアップ企業の支援拠点も併設する。だがこの街には、空港も鉄道駅もない。
人口100万人の多くが低収入に苦しむ忠県は、2020年までに1000の特別地区を設けるという中国政府の呼びかけに応じた多くの都市の1つだ。
中国政府は、内陸地の地元産業を中心とする、持続可能な地方経済を発展させようと計画している。だがその計画により、地方政府が抱えるリスク債務を統制する困難さも浮き彫りになっている。
政府の呼びかけに応えて地方政府が計画した産業振興策の中には、クラウド・コンピューティングや、チョコレート製造、伝統絵画など、さまざまな産業が含まれている。新興産業のほか、伝統産業や、自然環境を生かした観光による振興を目指すものもある。
経済的に遅れた地方の経済成長が、長期的に促される可能性はあるものの、エコノミストは、中央政府が解消しようと努めてきたリスク債務が新たに積み上がり、国内各地で扱いに困る案件が増大する結果を招くことを懸念している。
中国政府の広報官室を兼ねる国務院新聞弁公室は、ファックスによるコメントの求めに応じなかった。
忠県のような特区の多くは、正式認可を受ける前に計画に着手しており、潜在的リスクを拡大させていると、エコノミストは指摘する。
「こうした計画は地方発展を巡る不平等解消に役立つ可能性がある一方で、多くの人が特区ファンドを利用しており、財政的な混乱を招いている」と、中国のシンクタンクである中国グローバル化研究センターのアナリストGao Wei氏は話す。