スーチー崇拝が鈍らせるロヒンギャ難民への対応
そのスーチーが今回の問題について、ロヒンギャ迫害という指摘は「偽情報の巨大な氷山の一角」(つまりフェイクニュース)だと非難している。これは欧米諸国にとって、あまりに大きな失望だ。
可能性は低いが、ノーベル平和賞を取り消すべきだという声もある。だが本当に懸念すべきなのは、1人の指導者の功績や、その人物に賞を与えたノーベル委員会の信頼性ではない。スーチーに対する個人崇拝が、各国の対応の遅れにつながっているかもしれない点だ。
スーチーの例は、世界の指導者を「英雄」と「悪人」に簡単に分けることの危険性を示す教訓となるべきだ。
欧米諸国の指導者とだまされやすいジャーナリストたちは、メディア受けする経歴を持つ指導者については独裁や腐敗を許しがちな一方で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)のような指導者はとんでもない悪人に仕立て上げる。こうした視点は、危機を解決する上であまり有効ではない。
大半の政治指導者は、自国の状況に照らし、自分や有権者の利益を考えて行動するものだ。1人の女性指導者が国内の多数派を強く擁護すると同時に、迫害を受ける少数派に対する多数派の姿勢を共有しても、驚くには当たらない。
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>
© 2017, Slate
[2017年10月 3日号掲載]