最新記事

北朝鮮情勢

マティスの「大規模軍事攻撃」発言で信憑性増した対北軍事作戦

2017年9月5日(火)17時00分
ハリエット・シンクレア

ジェームズ・マティス米国防長官の「大規模軍事攻撃」は、トランプが即興で「炎と恐怖」と言うのとは重みが違う Aaron P. Bernstein-REUTERS

<北朝鮮の「水爆実験」以来、北朝鮮攻撃を匂わす米政府関係者の言葉が増えてきた。だが中国は絶対に反対だ。この先、衝突は避けられるのか>

北朝鮮は9月3日、小型の水爆実験に成功したと発表した。それを受けて9月4日に開かれた国連安全保障理事会の緊急会合で、中国の劉結一(りゅう・けついち)国連大使は、北朝鮮情勢の平和的解決を強く求めた。「中国は、朝鮮半島における混乱や戦争を容認しない」と劉は述べた、と米政治専門紙「ザ・ヒル」が報じる。

【参考記事】中国が切った「中朝軍事同盟カード」を読み切れなかった日米の失敗

北朝鮮に対する軍事作戦行使の可能性を排除していないトランプ政権にとっては、障害になるかもしれない。

他方のアメリカ側からは、好戦的な言葉が次々と飛び出す。同じ国連安保理の緊急会合で、アメリカのニッキー・ヘイリー国連大使は、長年国連担当を務める記者たちも聞いたことがないという強い言葉が飛び出した。「北朝鮮は戦争を求めている。あらゆる外交努力を尽くすが、アメリカの忍耐にも限界がある」

ドナルド・トランプ大統領も、水爆実験成功後のツイッターで、孤立した北朝鮮は、緊張緩和の呼び掛けに反応していない、と不快感を露わにした。

「韓国でさえ、北朝鮮に対する融和政策には効果がないことを理解しつつある。北朝鮮が理解できるのは1つのこと(軍事力)だけだ」とトランプはツイートした。

中国にはこう応じた。「北朝鮮はならず者国家であり、中国にとって、大きな脅威と恥になっている。中国は事態を解決しようとしているが、ほとんど成果がない」

トランプより本当らしい

さらに今回最も強烈な先制「口撃」を放ったのは、ジェームズ・マティス米国防長官だ。彼は、考えうるすべてのシナリオを説明するようトランプに指示を受けたと述べた上で、北朝鮮に対する軍事作戦の可能性に関して次のように言った。「アメリカと、グアムを含むアメリカ領、我が国の同盟国に対するいかなる脅威に対しても、大規模な軍事行動で対処する」

マティスのこの発言は、トランプの「炎と恐怖」よりもはるかに条件付きの攻撃予告として重みがあると、ハーバード・ソサエティ・オブ・フェローズ(ハーバード大学のエリート研究者養成制度)の研究員エミール・シンプソンは、フォーリン・ポリシー誌に書く。

マティスは優秀な元軍人で戦略の専門家だ。しかもこの時のマティスの発言はトランプのアドリブと違い、一字一句事前に準備された言葉であり、米政府の正式な政策そのものだ。それが、もしアメリカか同盟国に脅威が迫れば「攻撃する」と言っているというのだ。

【参考記事】トランプ政権の最後のとりでは3人の「将軍たち」

また次の言葉から、アメリカの具体的な軍事作戦も読み取れるという。「(国連安保理のすべての理事国は)朝鮮半島の非核化を進めることでも意見が一致している。我々は北朝鮮という国家の全滅を目指しているわけではない」

これは、圧倒的な軍事力で奇襲し、核関連施設を中心に攻撃する、ということだ。それがアメリカの政策だとすると、中国やロシアはどう出るのか。

【参考記事】ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

農中、24年度は1.9兆円程度の赤字見込み 25年

ビジネス

ヘッジファンド、中国株に積極投資 米中貿易摩擦乗り

ワールド

世界の人道活動、米の援助凍結で「壊滅的打撃」=調査

ワールド

トランプ米政権、中国駐在公館職員を最大10%削減へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 7
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中