土星探査機カッシーニ、最終任務は衛星タイタンへの「最後のキス」
土星に突入したカッシーニは地表面に到達する前に大気中で消滅する NASA/JPL-CALTECH
<13年にわたって土星探査を行ったNASAの探査機カッシーニが、今月15日にその使命を終え、土星の大気に突入して燃え尽きる>
NASA(米航空宇宙局)の土星探査機カッシーニは、2週間後に燃料を使い切り、13年に及んだ土星周回のミッションを終えて、土星の大気に突入してその生涯を閉じる。
カッシーニのプロジェクトを担当してきた科学者たちには、いずれこの時が来ることはわかっていた。29日に行われた会見でNASAのリンダ・スパイカーは、「予定通りの最後だ」と語った。「土星の夏至にあたる時期までしか燃料は搭載していない。その最期の時が来た」と言う。
「自殺」するのは悲しい運命のようでもあるが、生物が生息できる可能性のある衛星エンケラドスなどに、地球からカッシーニが持っていった微生物が侵入する事態は回避しなければならない。
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しかしその前に、カッシーニには重要な任務が残っている。NASAは早期の段階で探査機を壊すのを避けるため、最も危険な任務は最後に回しているのだ。
捨て身のジャンプ
カッシーニはこれまでに22回土星を周回し、その間に土星とリングの間にも「ジャンプ」している。そして今月9日、最後のリングへの接近を試みる。
これまでのジャンプでは、リングの内側からの光景を送信してきただけでなく、リングの成り立ちについて学ぶ機会を提供している。まだ解明されていないのは、リングがどれだけのどんな物質でできているかという点だ。
リングを形成する物質が大きければ、リングも土星と同じ時期に形成されたと考えられる。しかし、もし小さければ(現状ではこちらの可能性が高いが)、リングは土星より新しく、おそらく土星に接近し過ぎた彗星や衛星が巨大な重力で破壊されてできたと考えられる。
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また土星の大気とリングの間にどんな化学反応があるのかもわかるだろう。土星の大気は、カッシーニがこれまで危険を冒して大気に進入してくれたおかげで、想像以上に複雑な組成だったことがわかっている。
そしてリングに近づく最後の任務がうまくいけば、リングの局地的な物質の密度の濃さや縞模様など、いまだに科学者が解明できていない謎に迫ることができる。
カッシーニはリングのそばを通り過ぎるといったん土星から遠ざかり、最大の衛星タイタンに接近する。タイタンの巨大な重力にカッシーニは推進力を奪われ、次に土星に戻る時にはもうその重力から逃れられなくなる。そのためNASAはタイタンへの接近を「最後のキス」と呼んでいる。