苦境のアリタリア航空 救済か破たんかに揺れるイタリア
4月29日、イタリアのフラッグキャリア、アリタリア航空が再び経営危機によって急降下するのを目の当たりにした同国の国民の多くが、いっそ「墜落」する方が国のためではないかと考え始めている。写真は2月、ローマの空港を飛び立つアリタリア航空機(2017年 ロイター/Tony Gentile)
イタリアのフラッグキャリア、アリタリア航空が再び経営危機によって急降下するのを目の当たりにした同国の国民の多くが、いっそ「墜落」する方が国のためではないかと考え始めている。
度重なるアリタリア救済のため、過去10年超ですでに総額70億ユーロ(約8540億円)を上回る税金が投入されており、そのことに激怒するイタリアの納税者は、ソーシャルメディアを通じて、再び救済を急ぐ政治的な誘惑に抵抗するよう、政府に呼びかけている。
「有権者にとって、アリタリアは無価値だ。ただの重荷だ」──。アンジェリーノ・ギネッリさんのこうしたツイートに代表されるような怒りの嵐がソーシャルメディアで巻き起こっており、これにはイタリア政界も注意を払わざるを得ない。閣僚は今のところ、何らかの言質を取られないよう消極姿勢を保っている。
今週始まったオンラインでの署名活動には、約1000人の賛同が集まった。その1人、シンツィア・ブリグーリョさんは、「アリタリア救済にはもう、うんざりだ」と書き込み、政府の不介入を求めている。
消費者団体もその動きに同調している。そのうちの1つであるCodaconsは、イタリアの会計検査院に対し、国家によるすべての企業救済を精査するよう迫っている。裁判所は、公金濫用の罪で閣僚を含む公職者に罰金刑を科すことができる。
労組の同意を得た経営陣による再建案が、アリタリア航空内の社員投票で否決された4日後、28日に公表された世論調査では、国民の77%が、アリタリアをそのまま倒産させるべきだと回答している。
「経営危機に瀕した企業に対応するため、政府は着実に財政赤字を積み上げてきた。イタリア国民が反発を感じているのは明らかだ」。同世論調査を担当したインデックス・リサーチでディレクターを務めるナターシャ・トゥラート氏は、調査結果とともにサイト上に掲載されたコメントでそう述べている。
国家支援がなければ、アリタリアは破綻への道をたどることになる。ライバルの航空各社は同社の買収にほとんど興味を示しておらず、24日の社員投票で1700人分の人員削減と給与カットという再建案が否決されたことを受けて、債権者も追加融資を拒んでいる。