ノルウェーの極右ポピュリスト政党は政権の座を維持できるか
北欧と言えば「環境政策に熱心な国」という綺麗なイメージが国際的には浸透しているが、ノルウェーは石油・ガス資源のおかげで成り立っている。それは同時に、「石油発掘=排出ガス増加=環境破壊を招く国内の最大要因」を意味する。「石油エネルギーからグリーンなエネルギーへシフト」という議論が以前から続いているが、現実と理想の距離は大きい。
進歩党には、「温暖化はそもそも人間が原因なのか」という温暖化懐疑論者が多く、「石油はこれからも、どんどん掘っていこう!」という政党だ。
温暖化対策より渋滞解消を重視「さらに多くの道路を!」 Photo:Asaki Abumi
同時に、「車の運転手の味方」としても人気がある。通行料金やガソリン料金の減税などを提言。「車をオスロ中心部からなくそう」という「緑の環境党MDG」とはまさに両極にあり、互いを毛嫌いしている。
進歩党の支持率はある程度一定している。特に、シルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣は、移民や難民に厳しい言動で物議を醸す一方、5月8日の世論調査では国民の約半数の49%がその移民政策を支持した(Dagsavisen紙依頼によるIpsos調査)。
ノルウェーの国境の番人として、厳しい政策を打ち出すリストハウグ移民・社会統合大臣 Photo:Asaki Abumi
つまり、進歩党の次期党首候補であり、「党のプリンセス」といわれるリストハウグ大臣のポピュリスト政策が大きく支持されていることになる。同時に、45%は不支持を表明し、国論は二分している。
ポピュリスト政党が政権で影響力を持つとどうなるのだろう。
進歩党は与党となって以降、他党と連立し、政策の一部では妥協しなければならなくなった。有料道路の料金は上がり、国家公務員の数が約千人も増加したことなど、公約破りも大きく批判されている。「期待していたほどではなかった」と、がっかりした有権者が、他党に逃げる傾向もある。
責任ある与党という立場になることで、これまで過激だった発言はトーンダウンした。リストハウグ移民・社会統合大臣を除いて、他の進歩党閣僚たちの言動は明らかに以前より過激でなくなっている。もし、今年の選挙結果次第で野党となった場合は、遠慮のない「進歩党節」が復活するだろう。
他党から嫌がられる傾向にある進歩党だが、アーナ・ソールバルグ首相率いる連立相手の保守党は、進歩党との協力体制の継続を望んでいる。