義を見てせざるは習近平、朝鮮有事に勇気なし
戦争中には中朝両国の軍事指導者が常に指揮権をめぐって激しく衝突。そのつどソ連の首都モスクワにいたスターリンによる遠距離からの調停で収まっていた事実も隠蔽されている。金と毛は朝鮮半島の武力統一を唱えたのに対し、ソ連はアメリカとの全面的な対立を避けて休戦に固執するなど、国際共産主義陣営も一枚岩ではなかった。
中朝両国は「唇と歯」に例えられるほど密接な関係だとの美化とは裏腹に、当初から深刻な不一致が存在した。そうした中朝関係に米ロという大国間の対立が相まって、今日の朝鮮半島の火種ともなっている。
大国は朝鮮半島に不穏の種こそまくものの、影響力の行使は限られたものだった。実は歴史的にも、朝鮮半島に対する中国の影響力は限定的だったことが分かる。
半島を力で抑え、確実に大陸の政治体制に組み込んだのはモンゴル人の元朝と満州人の清朝だけ。中国人(漢人)が支配者となった王朝には半島に進出する気力も財力もなく、ひたすら謀略を駆使して朝鮮社会に内紛を起こし、分裂国家を複数誕生させてコントロールしてきた。
中国のこうした陰謀体質を知っていた金日成も息子の金正日(キム・ジョンイル)総書記も北京の介入を嫌い、親中派を粛清し追放してきた。
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例外は朝鮮戦争だ。毛は義勇軍を送り込むことで、アジアひいては国際共産主義陣営の中で、スターリンに次ぐ指導的な立場を確立しようとした。
習近平(シー・チンピン)政権にそんな勇気はないとみていい。南シナ海と東シナ海では冒険主義を取っている。だが、「新型大国関係」をアメリカにほのめかされて喜ぶ習に、大国の領袖と認められるだけの「本気」は備わっていない。
[2017年5月2&9日号掲載]
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