最新記事

北朝鮮問題

アメリカが北朝鮮を攻撃したときの中国の出方 ── 環球時報を読み解く

2017年4月26日(水)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

米中両国が参加した環太平洋合同演習(2016年) Hugh Gentry-REUTERS

4月22日、環球時報は「ワシントンは北京に過分な期待をかけるが」という社説で、中国が軍事介入をするケースを書いている。それは中朝同盟を破った北への警告ととともに休戦協定を破った米国への警告とも読み取れる。

トランプ大統領に褒め殺しされて、窮地に追い込まれた習近平国家主席

社説の冒頭では概ね以下のように書いている。

――米大統領はツイッターで「中国は北朝鮮の経済的生命線だ。もし中国が朝鮮問題を解決しようと思えば、容易にできるはずだ」と書いている。トランプ大統領は彼独特のやり方で、北京に圧力を掛けている。ワシントンは北京が「手伝ってくれること」を鼓舞し、同時に北京が「十分には手伝えない時には」、ワシントンには別の選択があると言っている。北京は非常に困難な局面に追い込まれている。ピョンヤン(北)を説得しても言うことを聞かない。米韓双方に「双暫停」(北は核ミサイル開発を暫時停止し、米韓は合同軍事演習を暫時提秘する)要求を出しても、ワシントンもソウルも全く聞かない。トランプが言うところの「中国が北朝鮮問題を解決してくれるだろう」という言葉と中国が希望する解決方法の間には、あまりに大きな違いがあるのだ。(ここまで引用)

では、その違いはどこにあるのだろうか。

まず米韓合同軍事演習は、朝鮮戦争の休戦協定(1953年7月)に違反する。なぜなら、休戦協定の第四条第60節には「休戦協定締結後、いかなる他国の軍隊も三カ月以内に南北朝鮮から撤退すること」と書いてある。中国の軍隊は1954年から58年までの間に完全撤退した。しかし米軍は今もなお撤退していない。それどころか軍事演習をさえしているのが現状だ。

第60節には、そこに書いてある内容を実行するためにハイレベルの政治会談を行うこと、という記述があるが、54年にジュネーブで開催された政治会談を、米国だけがボイコットしたままだ。

実は、この現状に対する中朝の不満は普通ではない。

その意味で、中朝間には共通点があることは、ある。

しかし、今や米国と「新型大国関係」を築きたいと思っている中国にとって、「米中蜜月」は決して手放したくない「宝」のようなものだ。だから文章はやんわりとしているが、米韓に「悪いのはお前たちだろう」と言いたい気持ちが滲み出ている。

北が新しい核実験をやれば、中国は遠慮しない

社説は続く。

――北朝鮮の核施設は中国のすぐ近くにある。放射能汚染を受ける可能性が非常に高い。それが防げない状況が来たら、中国は遠慮しない。中国は国連安保理の決定に従い、さらなる厳しい経済制裁を北朝鮮に加えていくことになるだろう。北朝鮮への石油の供給を大幅に減少させるというのは、その対応の一つだ。完全に石油を断つことは北朝鮮に人道主義的な災難をもたらすので、その最低ラインは守らざるを得ないが、石油を断つ程度がどこまでかは、国連安保理が決める。工業システムも打撃を受けるだろうが、ピョンヤンの自業自得だ。

ただし、ここまでの厳格な制裁をしても北朝鮮の核保有を止めることができないとすれば、その遠因は米韓にあることを、米韓は反省すべきだ。もしワシントンが反省を拒絶し、北朝鮮に武力行使をするならば、朝鮮半島は戦争という新しい段階に突き進むだろう。中国は何としても、戦争には反対する。(ここまで引用)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ・メディア、「NYSEテキサス」上場を計画

ビジネス

独CPI、3月速報は+2.3% 伸び鈍化で追加利下

ワールド

ロシア、米との協力継続 週内の首脳電話会談の予定な

ワールド

ミャンマー地震、がれきから女性救出 死者2000人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    「関税ショック」で米経済にスタグフレーションの兆…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中