マレーシア副首相「金正男の遺族と直接接触、DNA入手」
このイブラヒム副長官の発言から、金正男の遺族は、マレーシア当局と既に接触して、捜査上の必要に応じて遺体の管理を一任した、と見られる。これは、マレーシア警察がこれまで一貫して呼びかけていた「金正男の遺族による身元確認」が終了し、「遺族側への遺体引き渡し」は遺族の要望により延期された、ということになる。つまり、金正男の遺体が北朝鮮に引き渡されることはほぼなくなったということだ。
マレーシアの現地メディアは先月下旬、マレーシア警察当局が、金正男の妻イ・ヘギョンと、子供のキム・ハンソル、ソルヒが住んでいるマカオに捜査官を派遣し、DNAサンプルを確認しようとしていると報道したことがあったが、マレーシア警察側は否定していた。
北朝鮮国籍の容疑者4人は国際手配
一方で、16日、マレーシアの現地メディア、スターが報道したところによると、カリド・アブバカルマレーシア警察長官は「金正男暗殺事件が発生したときに、現場のクアラルンプール空港にいた北朝鮮国籍の容疑者4人に対するインターポールの国際手配書"Red Notice"が発行された。彼ら4人は北朝鮮の平壌に逃走したと思う。インターポールを通じて彼らを逮捕したい」と話した。
国際手配の赤色手配書は、インターポールの手配の中でもっともレベルの高い種類の手配書で、発見次第、逮捕可能なものだ。インターポールは世界190カ国の加盟国に容疑者の情報を共有して、捜査にあたることができる。
とはいえ、実効性の部分ではほとんど効力はないと見られている。なにしろ北朝鮮はインターポールに加盟しておらず、事件も北朝鮮当局が関与したものであれば、容疑者4人が国外に出ない限りは、拘束することはほぼ不可能だからだ。
暗殺事件の発生から1カ月目にして、遺族による身元確認と遺体管理のマレーシア側への委任が決まった。北朝鮮側への遺体引き渡しが事実上なくなったことで、事件の迷宮入りこそ食い止められたが、容疑者の多くは北朝鮮に帰国、残る3名ほどの容疑者はクアラルンプールの北朝鮮大使館に身を隠したまま。当面の焦点であった遺体の問題が解決したことで、事件解明は長期戦の様相を呈してきた。