最新記事

日本社会

40代未婚、不意に夢や子どもをあきらめる瞬間が訪れたら?

2016年12月21日(水)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


 出版社の営業マン・忠司さん(41歳)とは、あるイベントの懇親会で出会ったのだが、見るからに温和そうで、仕事もプライベートも充実しているタイプに見えた。しかし、話せば話すほど、その印象は悪くなる一方。口をついて出る言葉は、「いやあ、僕なんてダメですから」「営業くらいしかできなくて、部下からバカにされていますし」「こんなオッサンだから結婚も無理だし、いつ孤独死してもおかしくないので」などグチのようなものばかりだった。しかも、苦笑いを浮かべ、自虐ネタとして笑わせようと思っているところが何とも痛々しい。その佇まいから「50代前半かな?」と思っていたところ、41歳と聞いて驚いた。眉間には深いシワが刻まれ、髪の毛はペチャンコで白髪交じり、疲れているのか何だか眠そうだ。忠司さんはなぜ10歳以上も年上に見えるほど、老け込んでしまったのだろうか。

 ところが、話を掘り下げて聞いてみると、「実は、かつて携わっていた編集の仕事に戻りたい」「実は、できることなら結婚して子どもが欲しい」という夢や希望を持っていることが発覚。自信はないながらも、夢や希望を話すときの顔はうれしそうであり、魅力のある男性に見えた。こんな表情を同僚や女性たちに見せられないから、けっきょく一人のままだし、自信が持てないのかもしれない。

 忠司さんのように「夢や希望を素直に言えず、いったん胸の奥にしまっている」という40代の独身男性は多く、あきらめたようなフリをしているが、本心でないのは明らかだ。話し相手に「そんなことないよ」「まだ全然大丈夫」とフォローして欲しいのであって、「何とかしてあげようか」「助けてあげる」という申し出をじっと待っている。

 そんな姿は周囲の人たちには"くたびれた中年男"や"ひがみっぽいオッサン"にしか見えず、特に年下女性たちからは、「気持ち悪い」と冷たい視線を浴びてしまう。そもそも「夢や希望を素直に言える」からこそ、「年下女性とつき合う若々しさがある」とみなされるのだから仕方がない。「ただ遠慮も自虐もせず、構えることなく素直に夢や希望を言えばいい」だけ。たったそれだけのことができないのが、40代の独身男性なのだ。スッと言えれば、「いい歳してみっともない」「今さら往生際が悪い」なんて言われることはないし、むしろ「若々しくていいね」と思われるのだから、大風呂敷を広げて欲しい。

 夢や希望の中でも、40代の独身男性にとって特別なものは、自分の子ども。かつては「いらない」と思っていた人ですら、「自分の子どもがいないまま人生を終えるんだ......」という切ない実感が押し寄せる。人によっては、突然強い喪失感に襲われることもあるが、それは「本当は子どもをあきらめたくない」という本心に他ならない。

【参考記事】全米一の「しくじり先生」が書いた不幸への対処法

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG「ビジョン・ファンド」、2割レイオフ

ビジネス

三井住友FG、米ジェフリーズへ追加出資で最終調整=

ワールド

EU、ロシア産LNGの輸入禁止前倒し案を協議

ワールド

米最高裁、トランプ関税巡る訴訟で11月5日に口頭弁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中