日本の法律が迫る家族分断 不法就労の仮放免者らに重い選択
ウティナンのケースは、在留許可なく日本で暮らす外国人家族の一部に対し、日本の政府もしくは裁判所が提示する家族分離という苦渋の選択肢の一例だ。彼らの多くは1990年代にペルーやボリビアなどの国から、より良い生活を求めて観光ビザで来日し、そのまま滞在した両親と、日本で生まれた彼らの子どもたちだ。
母が去った今、日本で生まれ育ったウティナンには、事実上の祖国となる日本に家族はいなくなった。母と子が別れて生活するのはこれが初めてだ。
「お母さんは僕が日本にいられるために、帰るつもりだ」。母の出発前、ウティナンは空港でこう語った。そして、「さみしい」とつぶやいた。
6月30日の判決は「なお書き」として「原告子(ウティナン)は、定時制高校に進学するなど、本邦の社会への順応の度合いを高めつつある」としたうえで、母の送還後に養育に責任を持つ者がいれば、ウティナンへの在留特別許可が再検討される可能性がある、と付記した。
しかし、親子離れ離れの暮らしは容易に受け入れがたい。ロイターの取材に応じた5つの家族は、入管職員から口頭で伝えられた「両親が帰国すれば子どもが日本の在留許可を得られる」という提案を拒否した、と答えた。彼らは家族の分離という選択肢を拒み、家族そろって日本に定住できる方法を模索している。