レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた
その後、レジリエンスの研究は、戦地からの帰還兵に焦点が当てられた。戦地で残酷な経験をした帰還兵のなかでも、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に長期間苦しむ人、ほとんど障害がない人、まったく障害がない人がいたため、それについて研究が進められたのである。
レジリエンスは、自然災害によってコミュニティが極度の損失や飢餓状態などに見舞われた後で、自らを再建する能力、そして行政機能を迅速に回復させる能力を表す用語でもある。また、コミュニティが伝統産業を失うなどして景気が低迷したときに、自らのあり方をいかに再構築するかを語るときにも使われる。
レジリエンスは金属や人だけに使われる言葉ではない。生態学では、生態系がダメージや汚染に耐えて生き抜く能力をさす。ビジネスの世界でいうレジリエントなシステムとは、緊急事態に際して業務を停止させないようにするため、数段階に分けたバックアップシステムが整備されていることを意味する。また、米国国際開発庁によるレジリエンスの定義は、「人々、世帯、コミュニティ、国およびシステムがショックやストレスを受けたとき、弱体化が長期に及ばないように、また、包括的な成長が促されるように、そうしたショックやストレスを和らげ、それに適応し、そこから回復する能力」とされている。
【参考記事】世界経済の新たな危機管理は有効か
※シリーズ第2回:成長するには「失敗」に必要以上の注意を向けないこと
『何があっても打たれ強い自分をつくる
逆境力の秘密50』
ジョン・リーズ 著
関根光宏 訳
CCCメディアハウス