最新記事

医療

病院が患者を殺す 米国で広がるMRSAの脅威

2016年10月1日(土)22時09分

 薬剤耐性菌感染による死亡報告を義務づけていない州の1つが、全米で最も人口の多いカリフォルニア州である。ロイターの分析では、カリフォルニア州における薬剤耐性菌感染に関連する死亡例は、上記の12年間で2万件以上特定され、全ての州のなかで最多となった。同州保健当局の広報担当者は、州法では感染については報告しなければならないが、死亡の報告は義務づけられていないという。

 ロイターの分析によって得られた合計の数値からは、問題が全国的に悪化していることが示されている。薬剤耐性菌感染による死亡数は、2003年の約8600人から、2014年には約1万6700人へと2倍以上に増加した。

 昨年開催されたあるカンファレンスでは、院内感染防止の専門家たちがCDCの担当者に対し、州法やメディケア・ メディケイド・サービス・センター(CMS)が義務づけている感染報告を、医療スタッフや内部検証委員会が妨害することがあると訴えた。予防可能な感染の発生や感染率の高さを理由に、病院への報酬が引き下げられるからだ。

 専門家たちによれば、医療スタッフは、感染の明らかな兆候を示している患者を検査しない場合もある。これは、報告ルールを回避するための戦術の1つとして使われているという。

カウントされない死

 ロイターの取材に対し、報告される抗生物質耐性菌の感染による死亡数を集計していると答えた州は16州にとどまった。この他8州は集団発生の一部である場合のみ死亡数を追跡していた(ペンシルベニア州とジョージア州はアンケートには回答できないとしている)。

 死亡数を追跡していない州の1つがテキサス州である。ナタリー・シルバさんは2012年11月、病院運営最大手ホスピタル・コーポレーション・オブ・アメリカ(HCA)が経営する同州エルパソのデルソル医療センターでMRSAに感染した。姉妹のクリスタル・シルバさんによれば、帝王切開により健康な男の子を産んでから2日後、切開の傷跡から大量の出血が始まった。ナタリーさんは、MRSA陽性と診断された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インタビュー:外交で「高市カラー」は難易度高い、外

ワールド

韓国産業相が再び訪米、関税協定の最終合意へ詰めの協

ビジネス

午前のドルは151円後半で弱含み、株安で調整の動き

ワールド

茂木外相、関税協議の日米合意「着実に実施」 自身が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中