最新記事

インタビュー

スヌーピーとデザインと村上春樹――ブックデザイン界の巨匠チップ・キッドに聞く

2016年6月20日(月)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「色や絵、文字について教える本はたくさんあるのに、グラフィックデザインを子供たちに教える本はどこにもない、と編集者に制作を打診された。確かに、私がグラフィックデザインについて学んだのも大学に入ってからだった。ずっと身の回りにあるのに、誰もグラフィックデザインのことを知らないまま大人になる」

 キッドによれば、創造性あふれる子供たちは(広義の)「グラフィックデザインをいずれにせよ作っている」のだから、教える本があったほうがいい。それに、現代の子供たちは昔に比べ、書体(タイプフェイス)や色などの"材料"を簡単に手に入れられるという。コンピューターのなかった時代とは違うのだ。

「所有したくなる本を作れば、紙の本は生き残る」

 そう考えれば、時代の変化は、次の世代の優れたデザイナーを生む一助となるのかもしれない。だが一方で、デジタル化の波は当然、アメリカの出版界も直撃している。先に紹介したTEDトークでは、「Kindleでこれ(ブックデザイン上の工夫)ができるか?」などと皮肉っていたキッドだが、書籍業界の未来をどう考えているのだろうか。

「この先どうなるかを予測することはできないが、私はブックデザイナーとして常に、モノとして所有したくなる本を作ろうと心掛けてきた。所有したくなる本を作ることができれば、紙の本は生き残るだろう」

 シンプルだが多くの人が同意するであろう、重みのある言葉だ。

 キッドは今、自身の新たな作品集を準備しており、来春には刊行される予定だ。「物静かで紳士的。素晴らしい人物......おまけに、実年齢より20歳は若く見える」と彼が称賛する村上春樹が、序文を書くという。『ピーナッツ』に影響を受けたというチップ・キッドの作品を、村上春樹がどう形容するか、今から楽しみだ。

【参考記事】チェコ語翻訳者が語る、村上春樹のグローバルな魅力


『GO チップ・キッドのグラフィックデザイン・ガイド』
 チップ・キッド 著
 中村有以 訳
 CCCメディアハウス

スヌーピーミュージアム
オープン記念展「愛しのピーナッツ。」
東京都港区六本木5-6-20
9月25日まで(会期中無休) 10:00~20:00
入館料:一般1800円(前売券) ※日時指定の予約制。
http://www.snoopymuseum.tokyo/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

中国、日本産水産物を事実上輸入停止か 高市首相発言

ワールド

訂正-ジャワ島最高峰のスメル山で大規模噴火、警戒度
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中