最新記事

インタビュー

スヌーピーとデザインと村上春樹――ブックデザイン界の巨匠チップ・キッドに聞く

2016年6月20日(月)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

chipkidd160620-3.jpg

オープン記念展「愛しのピーナッツ。」で、チップ・キッドは1951年3月9日のコミックをお気に入りのエピソードとして紹介 ©Peanuts Worldwide LLC

 著名なデザイナーであるだけでなく、コミックやデザインに関する自著も多いキッド。2013年には、グラフィックデザインの入門書も刊行している。昨年邦訳の出た『GO チップ・キッドのグラフィックデザイン・ガイド』(中村有以訳、CCCメディアハウス)だ。

ジョブズ後の時代のグラフィックデザイン入門書

 キッドは『GO』で、自分の手掛けた作品などを例に使って、グラフィックデザインの基本をわかりやすく丁寧に解説している。形から色、タイポグラフィ、内容をどうデザインに落とし込むかというコンセプトの立て方まで、デザインの細かなテクニックというよりは、根本的な考え方を扱った入門書だ。

 ほんの一部だが、『GO』から引用しよう。

chipkidd160620-book1.jpg

「形」のアイデアの一例として、ビジュアルを上下逆さまにしたらどんな効果を生むか、反転させることで人の注意をどう引きつけられるかを、自分の作品を例に使って説明(42~43ページより)

chipkidd160620-book2.jpg

「色」の解説のページでは、自ら手掛けた映画のポスターを題材に。「ときには色数が少ないほうが......いい」の効果が一目瞭然で、これぞまさにデザインの力だとわかる(74~75ページより)

 故スティーブ・ジョブズの登場をひとつのきっかけに、デザインというものの重要性が広く認知されるようになった。アップルの最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブを始め、以前であれば裏方であったデザイナーが、世間一般にも名を知られるようになった。一方で、世界的なデザインコンサルティング会社IDEOのティム・ブラウンが言ったように、「デザインはデザイナーだけに任せるには重要すぎる」という考えも、共有されるようになってきたと言えるだろう。

 そうした意味で、キッドの『GO』は、デザイナーでない人がデザインの素養を身につけるのに役立つ1冊かもしれない。実際、どんな意図でこの本を作ったのかとキッドに尋ねると、早くからグラフィックデザインについて知ってもらいたいと、10歳の子供を読者に想定して作ったものだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き

ビジネス

トランプ氏、ビットコイン戦略備蓄へ大統領令に署名

ビジネス

米ウォルマート、中国サプライヤーに値下げ要求 米関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中