最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

クルーズ撤退、ヒラリー敗北の衝撃

2016年5月4日(水)17時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 しかし問題はそのヒラリーだ。今回のインディアナ州では、民主党も番狂わせとなり「死に体」のはずのサンダースが勝ってしまった。獲得代議員数では大勢に影響はなく、ヒラリーの優位に変わりはないが、イメージとしてヒラリーのダメージは大きい。

 特に、ウェストバージニア州で「これからは再生エネルギーの時代だから、炭鉱は閉鎖、鉱夫という職業も消滅する」と言ったヒラリーのスピーチが「大炎上」した結果、こともあろうに「その鉱夫代表に会って直接謝罪」した映像が全国に流れたのだが、これがかなり足を引っ張ったと言える。クリントン家にしては、珍しいダメージコントロールの失敗だ。

 この失言が「ヒラリーは庶民の雇用には無関心な富裕層代表」というプロパガンダの標的となっている。サンダースが撤退しない限り、この種の批判は続くだろうし、共和党内が「トランプで決まって無風状態に」なる一方で、民主党内の「コップの中の嵐」が各メディアで放映される頻度は高まる。

 トランプ陣営もそこは計算していて、「サンダース支持層」を本選で取り込もうとしている。さすがに11月に投票機で「トランプ」のボタンを押させるのは無理でも、サンダース支持派を棄権に追い込むことは、ヒラリーの票固めをジワジワ崩すことにもなりかねない。

 このインディアナの予備選で、大統領選の風景は大きく変わった。だが、その行き着く先は依然としてまったく不透明なままだ。

ニューストピックス:【2016米大統領選】最新現地リポート

≪筆者・冷泉彰彦氏の連載コラム「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英仏・ウクライナの軍トップ、数日内に会合へ=英報道

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ反発、大幅安から切

ビジネス

米利下げ時期「物価動向次第」、関税の影響懸念=リッ

ワールド

再送-日鉄副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中