裁判官を死に追いやる中国式「法の支配」
今回はそうした世論は盛り上がっておらず、馬の仕事ぶりを高く評価する声が強い。最高人民法院(最高裁)は年間400件近い事件を担当していた馬を称賛し、他の裁判官に彼女を見習うよう促した。
だが法曹界からは、当局の追悼ムードをあざ笑う声も上がっている。中国政法大学の呉丹紅(ウー・タンホン)副教授はマイクロブログ新浪微博(シンランウェイボー)で「馬は巨大な司法システムの歯車の1つにすぎない」と書いた。「『馬を見習え』と言うことは、病的なシステムと労働環境を容認し、推奨せよということだ。これでは、さらに多くの裁判官が冷酷な車輪に巻き込まれるだけだ」
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劣悪な労働環境に暴力事件への恐怖も加わり、裁判官が職場を去るケースが続出している。当局は彼らの安全を守る方策を打ち出そうとしているが、根底にある司法への不信が解消されない限り問題は解決しないだろう。「国民は司法の独立性を信じておらず、裁判官が偏っていると考えているから(司法への)恨みを抱きやすい」と、ある弁護士は語る。
政府が目指す「法の支配」も、西欧型の公正なシステムとは別の方向に向いている。習政権は、絶対的な権力を確立するには非情な手段を含む厳格な法支配が必要だとする中国古来の思想を信奉している。歴史を振り返れば、その手法に頼った支配者の多くが自滅の道をたどっているのだが。
From GlobalPost.com特約
[2016年4月 5日号掲載]