最新記事

貿易

中国、米国との貿易摩擦解消へ7分野で輸出補助金廃止

対象となるのは特殊製品に特化、米鉄鋼業界の不満は全面解消とはならず

2016年4月15日(金)20時07分

 4月14日、米国は中国が鉄鋼やアルミニウム、農産品などに広く支出していた輸出補助金の廃止に同意したと明らかにした。写真は河北省の鉄鋼パイプ工場で昨年11月撮影。(2016年 ロイター/ Kim Kyung Hoon)

米通商代表部(USTR)は14日、中国が鉄鋼やアルミニウム、農産品、繊維製品などに広く支出していた輸出補助金の廃止に同意したことを明らかにした。

USTRはこの日の声明で、中国が「実証基地・共通サービス基盤」と呼ばれる政策プログラムを廃止すると発表した。中国はこのプログラムに基づいて、7つの経済分野で中国企業に輸出補助金を支払っていた。

合意は、米国との貿易摩擦の解消に向けて中国が一歩歩み寄ったことを意味する。米中間の貿易摩擦は鉄鋼や農業、情報、金融など広い分野に及ぶ。

米国は約1年前、中国の政策が「不公平で、禁止されている輸出補助金を、広範に中国の製造業者や生産者に提供している」として世界貿易機関(WTO)に提訴した。

USTRのフロマン代表はこの日の声明で「合意は大規模で複雑な輸出補助金プログラムのあらゆる要素を是正するものだ」とした。「中国の動向を監視し、合意条件に従っているかどうか確認するためのしっかりとした基盤構築に必要な透明性を確保するものでもある」とも付け加えた。

USTRによると、中国の政策プログラムの下で補助金を受け取っていた産業には、繊維や軽工業、特殊化学製品、医療品、ハードウェア、農業、そして鉄鋼やアルミニウムなどの金属産業が含まれる。

特に鉄鋼は、中国の生産能力の余剰が米国の鉄鋼業を圧迫しており、米中間の火種となっていた。ただ、関係筋によると、今回の合意は特殊製品に特化しており、米国の鉄鋼業界の助けになるほど包括的なものではないという。USTRは昨年、中国が輸出業者に支払った補助金は3年間で10億ドルを超えると試算。いくつかの企業は少なくとも年間63万5000ドルを受け取ったという。WTOは昨年4月に米国の訴えを審査するためのパネルを立ち上げた。

中国は2001年にWTOに加入して以降、海外市場における「ダンピング」(不当廉売)で頻繁に訴えられている。WTOの規定で、輸入国は不当廉売の疑いのあるモノに対して報復関税をかけることができる。

[ワシントン 14日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中