最新記事

言論弾圧

党を批判したとして編集担当者を解雇――中国「南方都市報」

2016年3月3日(木)17時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

IT化時代の情報発信を警戒して言論弾圧を強化する中国 jpa1999-iStock.

 2月20日にリベラルな報道で知られる中国の「南方都市報」が党を批判し習主席の重要講話を風刺する見出しを付けたとして、3月1日、編集担当者が解雇され副編集長にも厳重処分が下った。言論弾圧を強める中国の実態を追う。

【参考記事】「非正常な死」で隠される中国の闇

抵抗を示した「南方都市報」

 2月25日付の本コラム「メディア管理を強める中国――筆者にも警告メールが」に書いた通り、習近平国家主席は中国共産党の総書記として、2月19日、人民日報社、新華社、中央テレビ局を視察し、「党の新聞世論工作座談会(中国共産党メディア世論活動座談会)を主宰したあと「重要講話」を発表した。

 翌2月20日の中国の新聞は、いっせいに第一面に視察をした時の習近平の写真とともに、この「重要講話」を載せた。

 ところが一つの新聞だけ違っていた。

 それが常にささやかな抵抗を示し、リベラル傾向を持つ「南方都市報」の深◯市版だった。

 そこには以下の見出しがあった。ここでは日本文字で書くが、実際の見出しはウェブサイト「文学城」や「アップル・デイリー」などをご覧いただきたい。

党和政府主弁的媒体 (党と政府が主宰しているメディアは)

是宣伝陣地必須姓党 (宣伝の陣地で、党という姓でなければならない)

 の下に

魂帰
大海

 という文字がある。 

 各行の右端の2文字だけをつなげると「媒体姓党 魂帰大海」と読める。

 つまり「党という名前を持つメディアの魂は死んでしまった」という意味となる。

 おまけにこの見出しの下には、海に散骨している写真がある。これは1月末に99歳で他界した、深セン招商局の元常務副董事長・袁庚の家族が行なった葬式の場面だ。深◯市の新聞が深◯の改革開放に貢献した人物の鎮魂の場面を載せるのは、一見自然なように見える。

【参考記事】デンマーク「難民財産没収法」に抗議、アイ・ウェイウェイが作品展示を中止

 最初は誰もこの「風刺」に気がつかなかったのだが、香港の「アップル・デイリー」が「異変」に気がついた。これは南方都市報の抵抗にちがいないと報じたのだ。

 すると当局があわてて反応し、すぐさまウェブサイトにおけるこのページを削除し、「南方都市報」広東省版の第一面に差し替えられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中