安倍首相周辺で消費税10%延期の声、衆参ダブル選と連動の思惑
解散権を握る安倍首相は5日、「全く考えていない」と答えた。だが、解散に関しては、事前にどんな受け答えをしても「許される」というのが永田町の常識。1986年7月6日の衆参ダブル選の際には、当時の中曽根康弘首相が、事前に何度もダブル選の可能性を否定。後に「死んだふり解散」と呼ばれ、結果は自民党の圧勝。その後、自民党は中曽根総裁の任期を1年延長する党則改正を実行した。
リスクは株安
金融市場では「増税延期と衆参ダブル選が、円安・株高のエンジン」(外為市場関係者)と期待する声が出ている。
だが、ダブル選を目指す中で、大きな障害になりかねない事態が発生しつつある。株安現象だ。
米利上げ後のNY株式市場は調整を続け、日経平均は18日に発表した日銀の量的・質的金融緩和(QQE)の補完策をめぐって乱高下。21日も大幅続落して一時、1万8600円台まで下落した。
ある国内市場関係者は「衆参ダブル選期待で、来年5月から6月にかけて日経平均が2万2000円から2万3000円まで上昇しているシナリオを描いていたが、様子が違ってきた」と打ち明ける。
米利上げで中国などの新興国からの資金流出が加速するようなら、原油価格の下落もあいまって市場にリスクオフ心理が台頭。株価は日本だけでなく世界的に下落圧力を受けかねない。
株価が下落基調に転換した場合、ダブル選戦略は大きな制約を受ける可能性がある。
消費増税とダブル選をめぐる思惑が、2016年前半の大きな「テーマ」になることは間違いないようだ。
(竹本能文 梅川崇 取材協力:リンダ・シーグ 編集:田巻一彦)