朝鮮半島38度線が「平和の公園」に?
イメージ回復を狙う朴政権が南北の軍事境界線に「平和公園」の建設を提案
自然も豊か 人が足を踏み入れなかったおかげで軍事境界線は貴重な野生動物の故郷に Hyungwon Kang-Reuters
アメリカのビル・クリントン元大統領に言わせれば、ここは「地球上で最も恐ろしい場所」だ。何しろ「非武装地帯(DMZ)」のはずなのに、重武装した上で、にらみ合いが続いている。
朝鮮半島を南北に分断する軍事境界線は、朝鮮戦争(1950〜53年)の負の遺産。200万人以上の市民が犠牲になったあの戦争を思い起こさせる。南北朝鮮の間に和平条約は結ばれていないから、両国は今も「休戦」状態にある。
DMZは軍事境界線の南北に2キロずつの幅4キロの地域だ。地雷が埋められ、北から南へ掘られた4本のトンネル(今は観光名所だ)が発見されたこの場所では、時々銃撃戦が起こる。
DMZにある板門店は、韓国軍中心の国連軍と北朝鮮軍による共同警備区域(JSA)。旧ソ連式の茶色い軍服を着た北の兵士と、迷彩服やパイロット服の南の兵士が対峙する。
14年10月19日にはDMZ北西部で、境界線に接近した北朝鮮兵に対し、韓国側が警告射撃を行った。その前の10日には、韓国の活動家が飛ばした金正恩(キム・ジョンウン)体制を批判する印刷物を運ぶ風船に北朝鮮が発砲した。
そんなDMZのイメージを、韓国が変えようとしている。この地域は動植物の種類が豊かで、風景も美しい。そこで、この地域が南北の橋渡しになる可能性をアピールしようというのだ。
DMZは世界屈指の危険な国境地帯だが、域内の沼や草原に人の手はほとんど入っていない。絶滅危惧種のツルや、シベリアトラ、ツキノワグマなどもすみ着いている。
さまざまな事件や不祥事が続く国のイメージを回復させたい韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、「信頼外交」と呼ぶ南北の雪解け戦略の一環として、DMZに「平和公園」を建設しようとしている。
「非武装地帯を平和の象徴にすることで、私たちは戦いと争いの記憶を拭い去ることができる」と、朴は8月に語った。「信頼と協力、そして統一を、朝鮮半島にもたらせるだろう」