インドが激安で火星探査機を飛ばせた理由
対照的なのが、経済制裁が科されなかった軍需産業だ。アメリカなどの外国企業はインドの軍事官僚と癒着し、インドの軍需産業は最大70%を輸入に頼っている。軍用機もミサイルも、暗視ゴーグルさえ国内でまともに製造できないありさまだ。
製造業の成長を阻む官僚の腐敗はほかの産業にも広く及んでいる。製造業復活を掲げるモディの公約は、官僚と外国企業の癒着を引き離さない限り実現しないだろう。
歴代の政権はこうした問題に取り組んでこなかったために、「司法積極主義」を招いてしまった。90年代に入ると、裁判所が積極的に政治問題に関与し、政府に命令を下すようになったのだ。労働者の保護から環境保全のための規制まで、司法の介入は多岐にわたる。
この慣例は行政と司法のバランスを著しく乱してきた。先週の最高裁による鉱業権取り消しの判断は、おそらくインドの産業にとって最も痛手となる命令といえるだろう。
とはいえ最高裁の判事たちは、法的な責務を果たしたまでだと考えているはずだ。歴代政権が犯してきた失態の尻拭いのために、最高裁が介入に踏み切るのもある程度は仕方ない。こうしたいびつな現状を、モディ政権があるべき姿に戻すまで、司法がしゃしゃり出てくる事態は当分続くのだろう。
[2014年10月 7日号掲載]