エジプトで躍進、ムスリム同胞団の正体
アルカイダ幹部が明かす意外な「穏健さ」
ムスリム同胞団から派生した組織はハマスにとどまらない。中には、今や同胞団の敵に変貌したグループもある。
国際テロ組織アルカイダの最高幹部アイマン・アル・ザワヒリは若い頃、同胞団の思想家に師事していた。しかしザワヒリは、「その政治活動の始めから、同胞団は『偽イスラム』の臆病者で、平和的手段でエジプト政界に参加しようとしている」と非難し続けている。
図らずもムスリム同胞団の穏健さを証明するザワヒリの言葉にもかかわらず、イスラム過激派の温床として批判されがちなサウジアラビアは同胞団に深い疑念を抱いている。
本誌は、サウジアラビア情報機関と関係が深い複数のアナリストが昨年取りまとめた資料を入手。それによると、豊富な資金力で国際展開するムスリム同胞団は遠くマレーシアまで手を伸ばし、「その過激な主張を広めるため穏健派を装う政治家」を利用しているという。
エジプト国外のイスラム主義者や過激派は、エジプト民衆の勝利はイスラム教の勝利だと言わんばかりだ。イランの最高指導者のハメネイ師は、エジプトについて「イスラムの覚醒」の兆候だと発言した。ムスリム同胞団は直ちに反論した。ムバラクへの反乱はイスラム教徒ではなく「エジプト国民の革命」だ──デモ隊が落ち着きを取り戻すなか、その言葉は真実だと証明されつつある。
自由で公正な選挙が実施される限り、ムスリム同胞団は今後しばらくイスラム教国で重要な役割を果たすだろう。民主主義とは、集団の気まぐれな意思の発露でなく、組織力だ。民主主義国家では、有権者の支持を最も多く得た政党が政権を担う。
エジプト国民は長年、ムスリム同胞団を間近で見てきた。開かれた平和的な政治体制が実現すれば、同胞団は近い将来、神秘的な集団でなくなるはずだ。
ノーベル文学賞を受賞したエジプト人作家ナギーブ・マフフーズは57年にこう書いた。「知識の普及が、光がコウモリを追い払うように彼らを追いやるだろう」
アラブ世界の政府がようやくその事実を理解したとき、ムスリム同胞団は脅威であることをやめるはずだ。
[2011年2月16日号掲載]