日本は次のギリシャになるか
日本が財政危機に陥るのは時間の問題という声が強まり始めた
ギリシャの財政危機を機に「政府の借金」が世界の関心事になったが、そのなかでも特に日本に注目が集まっている。少なくとも数字の上では、日本の財政はギリシャが健全に見えるほどの危ない状況にあるからだ。
日本の公的債務残高は対GDP(国内総生産)比で約200%。ギリシャは115%。5月19日にスイスの国際経営開発研究所が発表した予測によれば、日本が公的債務を健全とされる対GDP比の60%に下げるには、2084年までかかる。ギリシャは31年までだ。
IMF(国際通貨基金)は11年度から財政再建への措置を取るようあらためて日本に提言した。これは日本には財政再建に向けて意味ある対策を取る意欲も能力もあるという前提だが、今のところその前提は正しくないようにみえる。
5月10日、財務省は「国の借金」残高が10年3月末時点で過去最大の883兆円に達したと発表した。国民1人当たり約693万円(7万5000ドル)の借金を抱えていることになる。ギリシャは半分以下の3万2500ドルだ(ただし1人当たりGDPは日本の7割しかない)。
起こり得る唯一の結果はインフレ
09年度は日本の国家予算の約4分の1が既存の債務返済と利払いに充てられた。10年度予算では、新たな借金となる国債発行額が戦後初めて税収を上回った。
ギリシャとは状況が異なるが、問題は日本が財政危機に陥るかどうかではなく「いつ」陥るかだという見方が、エコノミストや投資家、批評家の間で増えている。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科の野口悠紀雄教授は日本のバブル経済の専門家として知られ、バブル崩壊を予期していた少数派のエコノミストだ。今の日本経済に関してやはり暗い見通しを示す野口は、国家債務の状況からすると最終的にハイパーインフレ(超物価高騰)に陥る恐れがあると言う。「起こり得る唯一の結果はインフレで、唯一の問題はそれがいつ起きるかだ」
日本では長い間デフレが続いているため、ハイパーインフレに陥る危険は国民にも政治家にもピンと来ないかもしれない。だが、「次の国家債務危機が例えばイギリスかアメリカかアジアのどこかで起きれば、それが引き金になり得る」と、富士通総研のマルティン・シュルツ主任研究員は言う。