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アフガニスタンタリバンの心配は米軍増派にあらず
オバマ米大統領のアフガニスタン新戦略には、駐留米軍の増派が含まれている。だがタリバン幹部は本誌に対し、タリバンは今やアフガニスタン全土でゲリラ活動を展開しており、米軍増派はそれほど深刻な脅威ではない、と語った。
彼らがもっと懸念しているのは、ムハマド・オマルら最高幹部の身の安全だ。アメリカはパキスタン側の国境地帯で、彼らを狙った無人機や特殊部隊による攻撃を繰り返している。
その結果、タリバンの幹部たちはアフガニスタンと国境を接するパキスタンのバルチスタン州などから港湾都市カラチへと移住し始めている。カラチならアメリカの攻撃の手も及ばないからだ。タリバン工作員のザビフラ(過去の実績から信頼できる情報筋だ)によれば、最近ではバルチスタンの州都クエッタよりもカラチを拠点とする幹部のほうが多い可能性があるという。
オマルがクエッタからカラチに移住したとの報道もあるが、ザビフラはこの件については確認が取れていないと言う。とはいえカラチにはオマルの1人目の妻や家族が暮らしており、彼にとってなじみのない土地ではない。
パシュトゥン人が多く暮らすカラチは、同じ民族であるタリバンにとっては居心地がいい町だ。ザビフラをはじめとする複数の情報筋によれば、タリバンの工作員や支持者のなかには、この地で合法的な事業を営み、かなりの利益を上げている者もいるという。
パキスタン政府発行の身分証を持ち(偽造の場合も)、公共サービスを利用している者もいる。目立たないように暮らし、武力闘争を扇動することもない。 「カラチはわれわれにとって最も安全な場所だ」と、ザビフラは言う。「今後もそれを維持していきたい」
[2009年12月 9日号掲載]