タリバンの選挙妨害、北部でも
南部に米軍を増派したオバマの裏をかき、北部で攻勢を強めるタリバン。経済復興支援にきたはずのドイツ軍が攻撃にさらされている
新たな標的 アフガニスタン北部を守るドイツ軍はタリバンの攻撃にさらされている(09年4月、クンドゥズ州) Kai Pfaffenbach-Reuters
5年前にアフガニスタンの大統領選挙が行われたとき、北部クンドゥズ州の住民にとってタリバンは過去の存在だった。一時は政権まで握ったタリバンだが、01年のアメリカを中心とする有志連合諸国の攻撃に完敗。北部にいたタリバン兵はほとんどが捕らえられたか殺された。
おかげで、選挙は民族的に多様なクンドゥズ州だけでなくアフガニスタン全土で平和的に行われ、その結果ハミド・カルザイ現大統領が誕生した。だが20日に投票日を迎える今年の大統領選は様相が違うらしい。
よく知られるように、前回の選挙以降タリバンは南部で再び勢力を拡大してきた。ヘルマンド州などパシュトゥン人が大多数を占める地域で、彼らは市民を脅し、統治を混乱させ、商店から上納金を巻き上げ、アメリカ海兵隊に攻撃を仕掛けている。バラク・オバマ米大統領は駐留米軍の増派を実現したが、そのほとんどが投入されたのは南部だ。
南部が国際的な注目を集める一方で、タリバンはこの2年間で密かに北部にも戻っている。その事実はアメリカとアフガニスタン政府、そして北部に4000人の兵士を展開するドイツ軍を驚かせている。
アルカイダ支援?で攻撃も高度化
北部でタリバンによる襲撃事件や自爆テロは増える一方だ。過去2カ月でドイツ兵と米兵計7人が死亡し、7月26日にはカルザイが副大統領候補に指名しているカセム・ファヒム元国防相の車列が、遊説先のクンドゥズ市近郊で襲われた。
国内各地のタリバン勢力と同じように、北部のタリバンも選挙を失敗させるつもりだ。「タリバンは数年前と比べて驚異的に強くなっている」と、クンドゥズ州のタリバン勢力の司令官マウルビ・カリ・バシルは本誌との電話インタビューで語った。「ドイツは死んだ息子たちを収める棺をもっと送ってきたほうがいい」
もちろんバシルの発言は誇張だが、北部でテロ事件が徐々に増えていることは西側当局者も認めている。「北部はここ半年間で武装勢力の新たなターゲットになっている」と、カブール駐在の西側政府関係者は言う。
西側情報筋によると、現在のタリバン兵の数は01年の敗走以降最大になっていて、攻撃も徐々に高度化している。主なターゲットは軍事車列で、自動小銃やロケット弾のほか爆発技術を改良したIED(即製爆弾)を駆使して攻撃してくる。NATO(北大西洋条約機構)の軍事情報筋によると、こうした戦術にはタリバンを支援しているとみられるアルカイダの影がちらついている。