最新記事

ファッション

パリで成功をつかんだ日本人調香師、新間美也「まず詩を書いて、その目標に向け調合する」

2024年06月19日(水)13時30分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

香りという「見えない芸術」で、日本らしさをアピール

日本で育ち、日本の自然の香りをよく知っている新間さんは、香水を通して日本の正統なイメージを西洋社会に伝えていくという使命感を持っている。

「シンプルでありながら美しいという日本の美学を香りで表現したい」と、花、月、風に続いて桜の香水を作った。このシリーズ「ヘリテージ」は現在10種類。新間さんだからこそできる、和の要素を織り込んだ香水はほかに「着物(4種類)」、浮世絵へのオマージュの「ロード・ミヤ・シンマ(6種類)」 「ゴールド(2種類)」のコレクションが揃っている。日本での本格的な販売は、2016年秋に伊勢丹新宿店で開催された世界の香水の祭典「サロン・ド・パルファン」から始まった。

数百種もの香料を記憶している新間さんは、自分が感じたことを感じたままに香りに反映させている。作ってみたい香水について詩を書き、その目標に迫っていくという方法で調合を考えていく。出来上がった香水は、いずれも自信作。自分の子どもを世に送り出す気持ちで販売しているという。

自分はあくまでもクリエイターであって、ビジネスには長けていないと語る新間さんは「数えきれない失敗もありました。でも、その経験がすべて糧となって現在の私があります」と言う。

そして「香りは見えない芸術です。たとえ私が引退しても香水の処方は残ります。遠い将来も、たくさんの方たちに、Miya Shinma Parisの香水を芸術作品として愛用していただけたら嬉しいです」と、より販売戦略に力を注いでいる。Miya Shinma Parisは、とりわけイタリアやドイツで販売数が伸びている。その理由は、両国で、独立型調香師が作る小さいブランド(ニッチブランド)がフランスよりも好まれているからだと教えてくれた。品質管理も徹底し、厳選したフランスの工場で出来上がった自身の香水は、パリのMiya Shinma Parisのアトリエで、日本の基準に合わせて再度品質をチェックしてから出荷している。

日本で調香師の育成事業も

新間さんのもう1つの使命感は、日本の香水分野に貢献することだ。1998年、故郷の静岡にアトリエ・アローム&パルファン・パリというスクールを設立し、香りの美学や魅力を伝え、主に趣味としての調香技術を指導してきた。2013年からは、珍しい企画の香りのコンテストを開催している。応募者が作ったオリジナルフレグランスを評価し、最優秀賞の香水は製品化して贈呈する(販売可能)特典が付いている。スクールでは、今後、調香師として働きたい人へのレッスンを強化していくそうだ。

パリと日本を行き来し、日曜日や祝日も働くこともある。長期休暇は夏の2週間と、クリスマス前後の1週間で、一般的なフランス人の休暇よりもだいぶ少ない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

印財閥アダニ、会長ら起訴で新たな危機 モディ政権に

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 被害状

ビジネス

アングル:中国本土株の投機買い過熱化、外国投資家も

ビジネス

スターバックス、中国事業の戦略的提携を模索
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること