パリで成功をつかんだ日本人調香師、新間美也「まず詩を書いて、その目標に向け調合する」
香りという「見えない芸術」で、日本らしさをアピール
日本で育ち、日本の自然の香りをよく知っている新間さんは、香水を通して日本の正統なイメージを西洋社会に伝えていくという使命感を持っている。
「シンプルでありながら美しいという日本の美学を香りで表現したい」と、花、月、風に続いて桜の香水を作った。このシリーズ「ヘリテージ」は現在10種類。新間さんだからこそできる、和の要素を織り込んだ香水はほかに「着物(4種類)」、浮世絵へのオマージュの「ロード・ミヤ・シンマ(6種類)」 「ゴールド(2種類)」のコレクションが揃っている。日本での本格的な販売は、2016年秋に伊勢丹新宿店で開催された世界の香水の祭典「サロン・ド・パルファン」から始まった。
数百種もの香料を記憶している新間さんは、自分が感じたことを感じたままに香りに反映させている。作ってみたい香水について詩を書き、その目標に迫っていくという方法で調合を考えていく。出来上がった香水は、いずれも自信作。自分の子どもを世に送り出す気持ちで販売しているという。
自分はあくまでもクリエイターであって、ビジネスには長けていないと語る新間さんは「数えきれない失敗もありました。でも、その経験がすべて糧となって現在の私があります」と言う。
そして「香りは見えない芸術です。たとえ私が引退しても香水の処方は残ります。遠い将来も、たくさんの方たちに、Miya Shinma Parisの香水を芸術作品として愛用していただけたら嬉しいです」と、より販売戦略に力を注いでいる。Miya Shinma Parisは、とりわけイタリアやドイツで販売数が伸びている。その理由は、両国で、独立型調香師が作る小さいブランド(ニッチブランド)がフランスよりも好まれているからだと教えてくれた。品質管理も徹底し、厳選したフランスの工場で出来上がった自身の香水は、パリのMiya Shinma Parisのアトリエで、日本の基準に合わせて再度品質をチェックしてから出荷している。
日本で調香師の育成事業も
新間さんのもう1つの使命感は、日本の香水分野に貢献することだ。1998年、故郷の静岡にアトリエ・アローム&パルファン・パリというスクールを設立し、香りの美学や魅力を伝え、主に趣味としての調香技術を指導してきた。2013年からは、珍しい企画の香りのコンテストを開催している。応募者が作ったオリジナルフレグランスを評価し、最優秀賞の香水は製品化して贈呈する(販売可能)特典が付いている。スクールでは、今後、調香師として働きたい人へのレッスンを強化していくそうだ。
パリと日本を行き来し、日曜日や祝日も働くこともある。長期休暇は夏の2週間と、クリスマス前後の1週間で、一般的なフランス人の休暇よりもだいぶ少ない。