親に依存するのは恥ずかしくない? 米国のミレニアル世代が実家に帰る理由
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<親と同居することはもはや恥ずべきことではない、むしろ合理的だという考えが浸透しつつあるアメリカで彼らが自立できない根本的な原因とは?>
アメリカで実家に戻り親と同居する若者が増えています。2020年7月時点で、ミレニアル世代(18〜29歳と定義)の52%が実家に住んでおり、過去のピークであった1940年の48%を上回りました。(パンデミック直前の2020年2月の同居率は47%。ピュー・リサーチセンター)
また親と同居していないミレニアル世代であっても、多くが経済的に親に依存していることがわかっています。ピュー・リサーチセンターの2019年調査では、18歳から29歳までの子どもを持つ親の「約6割」が、過去1年間に子どもに経済的援助(住居費、学費、医療費、食費など)を与えたと述べています。
米国の高学歴化によって経済的自立が遅れている
かつてアメリカには、高校を卒業すれば家を出て、大学進学、軍隊への入隊、就職と、自立への道を歩み始めるのが当たり前という価値観がありました。18歳になった子どもが親元を離れていくことは、親にとって寂しい反面、「子育てが成功した証」であり、誇らしいことだったのです。
しかし1990年代以降、この考え方に変化が見られるようになりました。大学の学費、医療保険、住居費などの高騰に伴い、高校(あるいは大学)を卒業した子どもが、すぐに経済的な自立を実現することが難しくなったのです。
アメリカは学歴社会です。高卒と大卒では2倍以上の収入格差があることから、多くの若者は大学進学を選択します。しかし大学に進学することは、多額の「学資ローン」を抱えることを意味します。(2020年の大学卒業生で学資ローンを利用した学生の一人あたり平均負債額は37693ドル、約414万円)
また大学進学者が増えたことで、四大卒の学位を取得しても、すぐに高賃金の仕事に就ける保証はなくなりました。米連邦準備銀行(FRB)のデータによると、2020年の大学卒業生の41%は、大学の学位を必要としない仕事(専門性の低い仕事)に就いていることがわかっています。
アメリカは「専門職採用」が一般的です。ビジネス学部卒であっても、会計、ファイナンス、マネージメント、マーケティングなど、専門分野の知識と経験がなければフルタイム採用を勝ち取ることは困難です。そのため大学卒業後も多くの若者がパートタイムで経験を積んだり、大学院に進学するため、経済的自立が先延ばしになっているのです。