女性アーティストたちに多大な影響を与えてきた「オルタナの女王」の帰還
Back in the Game
シングルが先行リリースされた1曲目の「スパニッシュ・ドアーズ」は、メランコリックだがアップテンポなサウンドで別れを表現する。「長年のパートナーから別れを告げられたレストランに行くの。『どうすればいい? あなたがいない世界でどうやって生きていけばいい?』」
フェアのルーツであるシカゴに敬意を表した「シェリダン・ロード」など、自身を振り返る場面もある。
「シェリダン・ロードはシカゴの北郊と、より多文化で危険で刺激的で、競争の激しい世界である市街地をつなぐ大動脈。つまり、ある心の状態から──守られているような、無邪気なような、閉じ込められているような、とにかく外に出たいという気持ちから、レイクショア・ドライブに出ると、何者でもない自分の可能性が無限に広がっているという感覚になる」
11年ぶりとなる今回の新作までスタジオアルバムのリリースは中断していた。しかしここ3年は、デビューアルバム25周年を記念したリマスター版の『ガーリー・サウンド・トゥ・ガイビル』や回顧録の『ホラー・ストーリーズ』によって、フェアのキャリアは新たな評価を得ている。
さらに彼女のDIY的なアプローチは、スネイル・メイルやサッカー・マミーなどインディーの新世代の女性アーティストの音楽に受け継がれている。
チャンスを逃したくなかった
「私がこれほど情熱的に制作を再開したいと思った理由の1つは、私が理解できて、共感できて、親近感を覚える若い女性が今はたくさんいるから。音楽の世界に女性がこんなに増えて、この瞬間に加わる機会を逃したくなかった」
『ガイビル』の時代から世の中はずいぶん変わったと、フェアは感じている。「ライブやフェスのラインアップの中心になる女性アーティストは、明らかに増えている。(スタジオを使わない)ホームレコーディング技術のおかげで、多くの若いアーティストがレーベルとの契約を待たずに、自分の音楽を自分で発表できるようになった」
「さらにソーシャルメディアのおかげで、新しい世代が自分のキャリアに主体性を持てるようになった。このまま自分のアルゴリズムに没頭して、孤立して離れ離れになるかもしれないけれど、それは誰にも分からない。とにかくチャンスは逃したくない」
現在は8月12日から始まるモリセットとガービッジとのツアーの準備を進めている。次のアルバムの構想も練り始めているようだ。
「自分では見えている。回顧録と、(今回と次回の)2枚のアルバムは、私のキャリアの一場面としてデザインしたようなもの。このまま全てが前に進んで、次のレコードもすぐ世に出てほしい」