プーチン氏、戦時経済の歪み認識 交渉によるウクライナ終戦望む向きも
1月23日 ロシアのプーチン大統領(写真左)は同国の戦時経済の歪みに懸念を強めていると、5人の関係筋が匿名を条件にロイターに語った。写真は2019年6月、大阪で撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)
Darya Korsunskaya Guy Faulconbridge Gleb Stolyarov
[モスクワ 23日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は同国の戦時経済の歪みに懸念を強めていると、5人の関係筋が匿名を条件にロイターに語った。
ロシア経済は、2022年のウクライナ侵攻後に西側諸国が複数回にわたり制裁を課したにもかかわらず、石油、ガス、鉱物の輸出が原動力となり、過去2年間にわたり力強く成長した。
だが、記録的な軍事費支出の下で加速したインフレに対処するために導入された高金利と労働力不足により、国内経済はここ数カ月で逼迫している。
このことが、ロシアの一部エリート層の間で交渉による戦闘終結が望ましいとの見方につながっていると政府筋は話す。
2期目に就任したばかりのトランプ米大統領は22日、ロシアがウクライナ戦争終結に合意しない場合、ロシアと「他の参加国」に高水準の税金や関税、制裁を課すと警告した。
ロシア中央銀行の元副総裁オレグ・ビューギン氏はインタビューで「ロシアは当然ながら、紛争の外交的終結に向けた交渉に経済的観点から関心を持っている」と述べ、ロシアが国防費を急増させるなかで経済の歪みが拡大するリスクを指摘した。
ロイターは以前、プーチン氏はトランプ氏と停戦の選択肢について協議する用意があるものの、ウクライナにおけるロシア領土拡大が認められること、ウクライナが北大西洋条約機構 (NATO)加盟申請を断念することが条件だと報じていた。
ロシア政府は、国内経済とウクライナ和平交渉に関するプーチン氏の見解に関するコメント要請に応じていない。
ホワイトハウスの国家安全保障会議報道官はロイターに対し、トランプ氏は幅広い関係者を巻き込むことで「残酷な戦争を終わらせることに注力している」と述べた。
バイデン政権は任期終了間際に、ロシアの石油・天然ガス収入を標的としたこれまでで最も広範な制裁措置を発動。サリバン大統領補佐官(当時)はこの制裁でロシアに経済的圧力がさらにかかり、あらゆる交渉においてトランプ新大統領が優位に立てると述べていた。
ロシアは昨年、ウクライナでの領土支配を大幅に進め、現在ではウクライナの約5分の1を支配している。プーチン氏はロシア本土とクリミア半島を結ぶ土地の支配やウクライナ軍の弱体化など、主要な戦争目標はすでに達成されたと考えている、と政府に近い関係者は語った。
この関係者によると、プーチン氏は高金利が非軍事企業や産業に及ぼす影響を問題視し、戦争による経済への負担を認識している。
プーチン氏の苛立ちは顕著で、昨年12月の経済界幹部との会合では経済部門当局者らを叱責したという。信用コストが原因で民間投資が削減されていると聞いて不快感を示したとされる。
プーチン氏はこの会合から数日後の記者会見で「バランスの取れた金利決定」を要求。その翌日にロシア中央銀行は市場の利上げ予想に反して、金利を据え置いた。中銀総裁は会見で、圧力に屈したとの見方を否定した。