最新記事

子育て

誰もが容赦ない「選別」にさらされる中学生時代を見つめ直す

Don’t Blame the Kids

2020年06月30日(火)17時20分
ジュディス・ワーナー(作家)

アメリカの親は的外れな心配をしがち。卑猥なメッセージや画像のやりとり、いじめといった行為は、実際は世間が思うほど多くない。一方、親は見落としがちだが、中学生が直面している最大の危険はスマホでも同世代の子供たちでもなく、私たち大人だ。

より具体的に言えば、大人の世界に影響力を持ち、子育てを通して強化される共通の価値観──利己主義、競争、個人的成功への執着である。

調査の結果、そうした価値観は地位と自尊心の外的な指標と大いに関係があり、あらゆる年齢、コミュニティーのあらゆる人々に心理的ダメージを与えることが分かっている。個人を不幸にし、社会にとっても有害だが、中学生にはとりわけダメージが大きい。思春期前半は大事な時期で、特に自分のアイデンティティーや位置付けを示すことには脳が極めて敏感になるからだ。

「ご意見番」に徹すべし

この結果、親がわが子のためを思い励まそうとしてやることが、ことごとく裏目に出かねない。自分第一で結果だけを重視するよう教えれば、他人のニーズを軽視したり踏みにじることを奨励するばかりか、心の健康に不可欠な人間関係と帰属意識を奪うことにもなる。子供の戦いに親が口出しすれば、子供が適性を伸ばし、自分の能力に自信を持つチャンスを奪ってしまう。どちらも生涯にわたる回復力の根っこになる要素なのに。

私たち大人は自分や子供がピンチに陥ったとき、中学生のように感情的になって解決を焦ってはいけない。子供たちの話に耳を傾け、どっしり構えていられるようにしたいものだ。悪いことが起きても受け入れて、いつまでもくよくよしない方法を考える必要がある。そして、世の中で白黒はっきりしていることはほとんどないと肝に銘じ、中学校の暗い部分に軽さとユーモアを持ち込もう。

これがとんでもなく難しい。筆者自身、うまくいったことはほとんどない。

それでも取材中に中学校の教師をしている女性から聞いた話をいつも心に留めている。彼女が中学生の頃、友達とのお泊まり会のたびに彼女の母親も参加したという。批判はせず、ご意見番として「友達との間で何が起きているか、理解するのに手を貸してくれた」そうだ。「母はよく言っていた。友達がおかしな選択をするのはたいてい自尊心と好かれたい気持ちのせいだって。『むかつく』相手にも思いやりを持ちなさいって」

思いやりは中学生の子供を持つ親の心を癒やす。思いやりを持つよう教え、手本を示し、自分だけでなく他人の気持ちも思いやる子に育てることは、子供への最高の贈り物。完璧ではなくてもそれができれば、子供たちにメッセージを送ることになる。大丈夫、あなたならできる、友達をなくしたり波乱があったりしても世界が終わるわけじゃなく、解決できる問題だ、と。そうすれば子供たちにとっても親にとっても大いに励みになる。

中学生時代を見つめ直すことは、親にとっても成長し、よりハッピーな大人になるチャンス。試してみる価値はある。いつまでも中学生のままでは困るから。


20200707issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)

[2020年6月23日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること