誰もが容赦ない「選別」にさらされる中学生時代を見つめ直す
Don’t Blame the Kids
アメリカの親は的外れな心配をしがち。卑猥なメッセージや画像のやりとり、いじめといった行為は、実際は世間が思うほど多くない。一方、親は見落としがちだが、中学生が直面している最大の危険はスマホでも同世代の子供たちでもなく、私たち大人だ。
より具体的に言えば、大人の世界に影響力を持ち、子育てを通して強化される共通の価値観──利己主義、競争、個人的成功への執着である。
調査の結果、そうした価値観は地位と自尊心の外的な指標と大いに関係があり、あらゆる年齢、コミュニティーのあらゆる人々に心理的ダメージを与えることが分かっている。個人を不幸にし、社会にとっても有害だが、中学生にはとりわけダメージが大きい。思春期前半は大事な時期で、特に自分のアイデンティティーや位置付けを示すことには脳が極めて敏感になるからだ。
「ご意見番」に徹すべし
この結果、親がわが子のためを思い励まそうとしてやることが、ことごとく裏目に出かねない。自分第一で結果だけを重視するよう教えれば、他人のニーズを軽視したり踏みにじることを奨励するばかりか、心の健康に不可欠な人間関係と帰属意識を奪うことにもなる。子供の戦いに親が口出しすれば、子供が適性を伸ばし、自分の能力に自信を持つチャンスを奪ってしまう。どちらも生涯にわたる回復力の根っこになる要素なのに。
私たち大人は自分や子供がピンチに陥ったとき、中学生のように感情的になって解決を焦ってはいけない。子供たちの話に耳を傾け、どっしり構えていられるようにしたいものだ。悪いことが起きても受け入れて、いつまでもくよくよしない方法を考える必要がある。そして、世の中で白黒はっきりしていることはほとんどないと肝に銘じ、中学校の暗い部分に軽さとユーモアを持ち込もう。
これがとんでもなく難しい。筆者自身、うまくいったことはほとんどない。
それでも取材中に中学校の教師をしている女性から聞いた話をいつも心に留めている。彼女が中学生の頃、友達とのお泊まり会のたびに彼女の母親も参加したという。批判はせず、ご意見番として「友達との間で何が起きているか、理解するのに手を貸してくれた」そうだ。「母はよく言っていた。友達がおかしな選択をするのはたいてい自尊心と好かれたい気持ちのせいだって。『むかつく』相手にも思いやりを持ちなさいって」
思いやりは中学生の子供を持つ親の心を癒やす。思いやりを持つよう教え、手本を示し、自分だけでなく他人の気持ちも思いやる子に育てることは、子供への最高の贈り物。完璧ではなくてもそれができれば、子供たちにメッセージを送ることになる。大丈夫、あなたならできる、友達をなくしたり波乱があったりしても世界が終わるわけじゃなく、解決できる問題だ、と。そうすれば子供たちにとっても親にとっても大いに励みになる。
中学生時代を見つめ直すことは、親にとっても成長し、よりハッピーな大人になるチャンス。試してみる価値はある。いつまでも中学生のままでは困るから。
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[2020年6月23日号掲載]