女性の価値って? 性別だけで人生を過小評価される苦しみ
Rachael Denhollander’s Witness
写真はイメージ coehm-iStock
<全米を揺るがした体操協会の隠蔽事件 「女性の価値」を広く問い掛ける元女子選手デンホランダーの闘いの日々>
2016年、レイチェル・デンホランダーは旅先で夫からの電話を受けた。夫バンが車上荒らしに遭い、数千ドル相当を盗まれたという。
実はその数週間前、彼女はミシガン州の体操選手だった10代の頃に米体操協会の元医師ラリー・ナサーから繰り返し性的虐待を受けたことをインディアナポリス・スター紙に告白。最初の告発者として、ナサーに対する刑事訴訟と、教育における男女機会均等を定めた「タイトルナイン(米教育改正法第9編)」絡みの捜査の両方で、ミシガン州司法当局と密に協力し、報道機関や他の被害者からの電話への対応に追われていた。
それに比べれば車上荒らしは大したことではなかった。それでも夫が警察に通報し、フェイスブック上でも報告すると、2時間足らずでキリスト教福音派教会の指導者4人から、何か助けは必要ないかと電話があったという。デンホランダーの性的虐待の告発と訴訟が全米でニュースになっても、教会側は誰一人手を差し伸べなかったのに。
そんな些細だが赤裸々なエピソードは、デンホランダーが『女性の価値とは(What Is a Girl Worth?)』と題した著書で提起している問いへの1つの答えだ。この本は、単に個人的なトラウマや戦いを描いたものではない。体操界に限らず、女性たちが組織的に抑圧され、彼女たちの人生の価値が過小評価されている状況を暴いている。